第21話 神様へのお願い
「思ったより人並んでるね。下の屋台に人多いからまさかとは思ったけれど」
「先に御神籤やってもいいけど、やっぱり最初は参拝からだよね」
「うんうん」
瑞波の友達と別れた後俺たちは石造りの階段をめっちゃ上って拝殿へとやって来た。参拝客が多く俺たちの順番が来るには時間がかかりそう。
やった人も多いと思うが神社の階段や上ったところにある手水。もちろん俺も瑞波もやったんだけど、まさかの瑞波やり方が全然分かってなかった。
右左逆にやるし、なんだかわちゃわちゃしてたし。でもそんなのを見るのも楽しかったからいいんだけど。
ただ、今後もこれじゃあ困るだろうってことで俺が教えてあげたんだけどなんでやり方知ってるの!? ってめっちゃびっくりしてた。普通だと思うんだけどな。
「あ、そろそろ私たちの番だね。神様になんてお願いしよっかな」
瑞波がそんなことを言っている間に前の人が終わったようで俺たちの順番が回ってきた。
最初にお賽銭を入れて、鈴を鳴らして……。ちゃんと作法に則って。瑞波の方もしっかりできているようだ。
(今年こそ全国大会に行けますように。瑞波とたくさん楽しいことが起こりますように)
俺がそんなことをお願いして横の瑞波を見るとまだ手を合わせてお願いをしていた。なにやらぶつぶつ聞こえるぞ。
「今年は大樹くんと最高な一年を過ごせますように。もっとイチャイチャできますように。大樹くんにぎゅってされたいです……」
「ちょっと瑞波!?」
お願いの内容がやばかった。俺に聞こえてたってことは周りの人にも聞こえてたんじゃ……?
恐る恐る周りを見ると誰もが温かい目線を俺に向けていた。
あああああああ! めっちゃ恥ずかしい! これはやばいって。俺がそんなこと思っている間も瑞波は止まらない。
「み、瑞波。後ろの人も待ってるからそろそろ行こうか」
「えっ? あ、うん」
ちょっと強引になってしまったけれど何とか参拝を終わらせた。そして人気のないところまで移動する。
「どうしたの? なんだか顔赤いよ?」
「全部瑞波のせいだぞ……」
「私、なにかしちゃった?」
瑞波は自分のお願いがあれだけ声に出てたのに気づいていなかったらしい。まじかよ。あれ、無意識だったのか。
「瑞波の願い事全部声に出てたぞ。それもけっこう大きい声で」
「えっ!? 嘘でしょ!?」
瑞波の顔まで一気に真っ赤になってしまった。まぁそうなるよな。
「ほんとだよ。イチャイチャしたいとかめっちゃ言ってたじゃん。部活の方のお願いはよかったの?」
「部活の方は練習が始まったら必勝祈願で来るからいいと思ったんだもん……。今日は大樹くんとのことで頭一杯だったし……」
俺の問いに俯きながら答えてえくれた。そしてそのままぎゅーっと瑞波を抱きしめる。
「えっ? 大樹くん急にこんなことしてくれるなんて」
戸惑っているようだがしっかりと俺の背中に手が回させた。そこから10秒くらい経ったところで力を抜いて瑞波を離す。なんだか名残惜しそうな顔をしていたけど。
「瑞波がぎゅってされたいとか言ってたからさ。それは神様じゃなくて俺に言ってくれればいつだってするのに……」
自分でも言ってて恥ずかしくなってしまって最後の方は小声になってしまった。
「大樹くん……私やっぱり大樹くんのこと大好きだよ。今の言葉とっても嬉しかった」
そしてもう一度ぎゅーっとする。
「それじゃあ次は御神籤行こ! その後は屋台に行って!」
「ちょっと待ってよ!」
楽しそうに走っていく瑞波をみながら今年、絶対瑞波のお願いを叶えるんだと誓った俺だった。
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