第20話 初詣
俺の家の近くには有名な神社がある。いつも結構人多いけどお正月の三が日にもなれば半端ないほどの人が訪れる。
じゃあ俺の家もそこに行くのかというとそれはまさかのNO。おじいちゃんの家の近くの神社に行くのが毎年の最初のイベントだ。そして行くのは3日。お父さんが家から出たがらないから。
ちなみに今おじいちゃんの家とかの話はこれからの話に全く関係ない。
「瑞波おはよう。あけましておめでとう。今年もよろしく」
年明けて一度通話しながら言ったけれどちゃんと会ったのでしっかり目を見て言う。俺が言ったら瑞波も笑顔で返してくれた。
私服にマフラーを巻いた瑞波。最近直接会う機会がなかったけれどやっぱりこうして会うと心がほっこりする。
「久しぶりだね。元気にしてた?」
「元気だったけど瑞波に会えなくて寂しかったよ」
「もうっ! でも……私も……」
「んっ?」
「な、なんでもないよ! それよりさ早くいこっ」
ところで今俺たちがどこにいるのかというと俺の家の近くの有名な神社。三が日が過ぎて一月の四日に来てみたのだが未だに人が多い。
本当なら同級生、特に同じ部活の人がいるかも知れないということで一緒に行かないと考えていたのだが、「たまたまあったことにしたらいいんじゃない?」と瑞波が言ったので行くことになった。
「今日はたまたま会えたから一緒にお参りするんだよね」
とてつもなくわざとらしいセリフと共に俺の横にピッタリくっついてくる。
「なぁ瑞波。これって流石に偶然会ったくらいの関係じゃなくない?」
ぴったりくっつくこれは絶対普通の距離じゃない。手を繋いでないだけで彼氏彼女の距離だ。
「いいのいいの。心配しない心配しない。神様も待ってるから早くいこ?」
瑞波が楽しそうにそういうものだから俺もこのままでいっかと思ってしまった。と、いうことで2人仲良く参道を歩く。
「まだ屋台も出てるんだ。あ、これ美味しそう!」
そう言って指さす先にはお汁粉の文字が。まだ人が多いので屋台も盛り上がっている。
「帰りにちょっと寄っていこうか」
「うん!」
「あれ? 瑞波じゃーん! 久しぶり!」
そこで後ろから声がかけられた。その瞬間に背筋が凍り付くような感覚に襲われた。
(まずい! 今、瑞波と居るところ見られたら!)
やっぱり迂闊だった。もう瑞波の友達にバレた。どうする? ここは予定通りに偶々というしかないのか。
「あ、桃華ちゃんあけましておめでとう! 今年もよろしくね」
「うん。こっちこそ。それで……隣にいるのって空閑君だよね?」
「あ、うん。名前知ってくれてるんだね」
瑞波の友達は桃華さんというらしい。初めて会ったのに俺の名前を知ってくれていたなんて。有名人とかじゃないのに。それより何故かめっちゃ瑞波の方見てにやけてるんだけど。
「もちろんだよ。だって瑞波が……」
「はい桃華ちゃん! お母さんたちが待ってるよ! 早くいかないと!」
何かを言おうとしたところで瑞波がグイーっと桃華さんを引っ張っていった。何だったんだ? ただバレてはいないっぽい?
「あはは。桃華ちゃんのことは忘れてね。あの子は何も言ってない。いい?」
「オッケー。なんとかばれてないっぽいな。ただドキッとしたよ」
「そうだね。じゃあ気を取り直してお参り行こ」
そうして俺たちは神社の階段をまた登っていくのだった。
〈side瑞波〉
危なかったよ~。まさか桃華ちゃんと出会うなんて。桃華ちゃんと私はクラスが一緒だから私の恋愛相談のよく付き合ってもらってたんだよね。
大樹くんとどうしたらお付き合いできるとかどんなところが素敵だとか。多分、今会ったあの一瞬でバレたと思う。だってそういう目で見てきたし。
あのまま桃華ちゃん放っておいたら私が昔言った大樹くん好き好きエピソードばらされちゃうところだったよ。そんなことになったら恥ずかしい……
それよりも! 今はせっかく大樹くんとデートしてるんだから楽しまないと! やっぱり大樹くん好き~。
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