第16話 瑞波の家へ

「瑞波なんて言った?」


 一応聞き間違いということも考えてもう一度聞いてみる。


「だ~か~ら~。明日私の家来ないかって聞いてるんだよ。ちょっとしたお家デートみたいな?」


「行きます!」


 俺に断るという選択肢はやはりなかった。ただ、少しして冷静になる。俺、女の子の家に行くのか……?


 彼女とはいえまだ付き合い始めて2日。明日で3日。家に行くのはちょっと早いんじゃないだろうか。いや、みんながどれくらいで行くのかは知らないけど。


「本当は今日とかずっと一緒に居たかったんだけど私も用事あるし、大樹くんもみんなと行っちゃうし」


 やばい。瑞波の一緒に居たい会いたいって言う言葉が嬉しくて耳元が熱くなるのを感じる。


「それじゃあ前と同じで駅前でいいかな。10時くらいに私、迎えに行くから」


 それに俺も了承して通話を切った。



 そして次の日。


「うう。緊張する。瑞波の家に行くなんて……。まさか両親に挨拶するとか?」


 そんなこと考えてたらさらに緊張してきた。一応、お菓子もってきたけどこれで大丈夫かな。


「お待たせ大樹くん!」


 後ろから誰か肩を叩かれた。でもすぐに分かる。これは瑞波だ。


「瑞波昨日ぶりだな。それで俺が家に行ってもよかったの?」


「うん、もちろんだよ。私も大樹くんと忘年会したかったから、さっきまで準備してたの」


 やばい。俺、瑞波のことやっぱり大好きだ。この満面の笑み。これ見たらなんだかこっちまで楽しくなってくる。


「ん? どうしたの? 私なにか可笑しいかな?」


 自分に可笑しいところがあると勘違いしている瑞波はしきりに髪とかを気にしだした。そうやって慌てる姿も面白い。


「いいや。瑞波可愛いなって」


「ふぇっ?」


 これが鳩が豆鉄砲を食ったようっていうことなのかと言うような瑞波の顔。そのまましばらく固まった後、次はあわあわしだした。


「ちょ、ちょっと大樹くん! そういうのはまだ慣れてなくて心臓がバクバクしてやばいから。本当に嬉しいんだけどドキドキと胸キュンで死んじゃいそう……」


 胸に手を置いてスーハーと深呼吸をしている。その照れて赤くなった顔も可愛いと思うんだけど今はこれ以上言うのは止めておく。


 俺も瑞波に褒められたらたぶんあんな風になると思うし。瑞波の可愛い顔が見れたしオッケーだ。そう想う俺を横目でジーっと見てくる人1人。もちろん瑞波だけど。


「大樹くんって私とお付き合い初めてから何か変わったよね」


「そうかな? でも俺は瑞波に対してそう言う好意とかはなるべく表したいとは思ってるんだ。俺は瑞波が思ってる以上に瑞波のこと好きだぞ?」


 なんて言ったって中学のころから好きだったんだ。今まで言えなかった分、可愛いとかっていう事を伝えたい。


「もちろん嫌ならすぐにやめる。鬱陶しいとか思ったら言って欲しい」


「さっきも言ったけど嫌でも鬱陶しいとも思ってないから! ただ、大樹くんがそこまで私のこと想ってくれるのが本当に嬉しかった」


 そうい言ってはにかむ瑞波は天使のようで……見惚れていると俺の右手に温もりが。


「それじゃあ私の家にいこっか」


 瑞波と手を繋いで歩く。それがどれだけ幸せなことか。


「あ、そうだ。私も言っておくね」


 そのままぐいっと俺の顔の方に近づいて耳元で瑞波が言った。


「私も大樹くんのこと大好きだよっ」


 今度は俺が瑞波がさっきした反応をする番だった。











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