バレないように付き合います

第14話 二章 瑞波に応えたい

「いーちにー」


「いちっにーいちっにー」


 瑞波とのお出掛けが終わった次の日、俺はソフトボール部の部活に勤しんでいた。今はランニング。冬の寒い時期はあんまりボールを使うことはせず体力作りをすることが多い。


 基礎練で走ったり筋トレしたりと辛いメニューばかりだけどそれもいつか自分のためになると思えばそれほど苦ではない。


「それじゃあ、アップのランニングも終わったし5キロ走いくか」


 顧問の先生の一言で一気にみんなの顔色が悪くなる。これはだれもが嫌がる長距離走。冬の定番であり地獄。俺はそうは思わなかったけど。


「大樹は余裕そうだな。いつも先輩と互角だし、陸上部でもやっていけるぞ」


 修が冗談半分でそんなことを言ってくる。もちろん陸上部に行く気なんてないし、もし行っても結果は残せないと思う。


 と、そこでベンチから手招きしている我らがマネージャーの瑞波。これは俺を呼んでるのか?


「修、先にスタートライン行っておいてくれ。もう一回水分補給してくる」


「オッケー。ついでに俺のタオルも近くにあると思うから持ってきてくれ」


 俺も了解して瑞波の方に向かう。幸い誰も見ていない。


「あっ、大樹くん来てくれた。えへへ。こうしてお話するのって新鮮だね。でもごめんね部活の邪魔しちゃって」


「ううん。俺もこうして瑞波と話せて嬉しいよ。なんか照れ臭いけど」


「そう言ってくれると私も嬉しい。頑張ってね大樹くん。愛情たっぷり入りのドリンク準備して待ってるから」


 楽しそうに空閑大樹と書かれたスクイズボトルを持つ瑞波。


 俺たちの部活はそれぞれに自分のスクイズボトルを支給される。たぶん部費からで出るんだけど。あのポカリスエットと書かれたやつ。


「愛情たっぷり入りとか……うん。絶対一番でゴールしてそれ貰いに行くから」


 そんなの準備されてたらもう俺はいつも以上に頑張るしかないじゃないか。


「私も待ってるから。あ、そろそろ始まっちゃうから行かないとね。じゃあ頑張って!」


 こうして俺は瑞波に背中を押されてスタートラインに立った。記録は一応取るけどメインは体力作り。でも瑞波と約束したんだから絶対一番になってやる。


 いつも勝てない先輩がいるけど今日は勝たせてもらいますよ。


「それじゃあ始めるぞ。よーいドン」





「はぁはぁ。ダメだった……」


 結果は2位。やっぱりあの先輩には勝てなかった。あれだけのことを言っておいてダメだっただなんて。途中まではついていけてたけどラストスパートがマジで速かった。


「お疲れ様大樹くん。はいこれ。飲んでね」


 差し出されたのはさっき瑞波が言っていた愛情たっぷり入りのドリンク。それを受け取った俺は瑞波に謝る。


「ごめんな。一番になれなかったよ」


「ううん。順番なんて二の次。大樹くんが一生懸頑張った大樹くんかっこよかったよ。だから気にしないで。あっ。他のみんなにも配ってくるね」


 ゴールした他のみんなにもドリンクを配っていく瑞波。それを眺めながらかっこよかったよと言われたことが嬉しくこれからの部活も頑張ろうと思う俺であった。








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