第9話 一緒に夕食

「目的地はここだよ」


 和泉が指さしたところは主要道路から少し逸れて裏路地を数分歩いたところにあるお店。イタリアンと看板には書いてある。


「ここってなんていうか知る人ぞ知る名店って感じする。すごいおしゃれな感じだな」


 年季も入っていそうで少しだけクリスマスの飾りがしてある。お高そうな感じのお店だ。


「ここよく家族で来るの。とっても美味しいんだよ。じゃあ入ろっか」


 和泉が入っていったので俺もそれに習って入っていく。


「いらっしゃいませ。何名様ですか?」


 2人だと伝えるとそのままウエイトレスに2人用のテーブルに案内された。内装も落ち着いていて何人かが既に食事をしてる。


 今からここで和泉と2人で食事。同じ場所で食べることはあってもこうして対面で食べるなんて初めてだ。俺大丈夫かな。ちゃんと食べられるだろうか。


 不安になりながらもとにかく注文を済ませて料理が来るのを待つ。コース料理なので最初に来るのは前菜。


「それじゃあ大樹くんメリークリスマス。乾杯」


「うんメリークリスマス」


 ジュースが入ったグラスをこつんと合わせてそこからまずは前菜を食べてく。っていうかめっちゃ美味しい。前菜お代わりしたいくらいに。


「ん~やっぱり美味しい! 大樹くんにもここの料理を食べて欲しかったんだ。前菜だけでもすごい美味しいでしょ? メインのパスタはもう最高なんだよ! ってどうかした?」


「ううん。和泉ってこんな風に笑うんだなって」


「えっ? 私、可笑しな感じだった?」


 慌ててほっぺたをパチパチと軽く叩く和泉。そんなことをする仕草もまた可愛い。この短時間でこれだけ楽しいと思えるなんて。


「いいや全然変じゃないよ。むしろ可愛いと思う」


 そこまで言って気づいた。俺、今普通に和泉に可愛いって言ったよな……? 


「た、大樹くん……今、私のこと可愛いって言ってくれた?」


 顔を真っ赤にさせる和泉。俺も女の子に面と向かって可愛いって言ってしまってかなり恥ずかしい。でも、一度口にした言葉をなかったことにはできないし、そもそも和泉は可愛いんだから。


「うん。言ったよ。和泉はいつも可愛いと思う」


 思っていることを素直に言う。たったそれだけなのに心臓はバクバクするし、変な汗まで流れてくる。


「か、かわわわっ!」


 和泉も明らかに口調がおかしい。でもしばらく深呼吸してジュースを一口飲むと落ち着いたようだ。


「ありがとね。大樹くんにそう言ってもらえてとっても嬉しい。えへへ。こうして大樹くんに褒められるのって初めてだね」


「そうかも。でも今言ったことはほんとだから」


「う、うん。ありがと」





〈side瑞波〉



 これどんな状況なの!? 大樹くんに可愛いって言ってもらえたし! 嬉しくて泣いちゃいそうだよ~。今、絶対顔真っ赤になっちゃってるよぉ。


 でも、こうしてみるとほんと大樹くんってかっこいいなぁ。高校に入ってからすごい身長伸びた感じもするし、実際モテるんだよね。


 大樹くんは密かにモテる。かっこいいし、優しいし身長も平均くらいあるし。だからって他の女の子に大樹くんを渡す気なんてさらさらない。


 今日のお出掛けで少しでも私を意識してくれたらいいな。


 私はあきらめないよ大樹くん。絶対に次は大樹くんの方から好きって言わせちゃうんだから。一度振られたくらいじゃ絶対あきらめない。


 だって私は大樹くんのこと大好きなんだもん。あきらめない理由はそれだけで十分。





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