第8話 ドキドキします

「それでどこ行くんだ?」


「ふふふ。それはね、ひ、み、つ、だよ?」


 なんなんだこれは! 和泉がめっちゃ可愛くてドキドキしてしまう。こういった表情を見るのは初めてだ。


「さ、行こっ。あ、でも電車乗るよ。いいかな?」


「もちろん。和泉の行きたいところにいこう」


 笑顔で和泉に返事すると、なぜか急にもじもじしだした。


「そういうところだぞっ」


 それだけ言うとクルッと身を翻して改札の方へと歩いていく。俺も和泉の横を一人分開けて歩く。


 途中すれ違うカップルは手を繋いだり、彼女さんが彼氏の腕にくっついているけど俺たちはそんなことはしない。いや、してはいけない。


 今そんなことをしている人たちはみんな彼氏彼女の関係だから出来ていること。俺たちの関係は部活の選手とマネージャー。いうなら3年間の決められた時間だけの関係。好きな人が近くにいる楽しい時間。


 でも、やっぱりそれだけじゃもう足りないと思ってしまう。さっき初めてみた和泉の表情。そんな俺の知らない顔をもっと見てみたい。俺だけに見せて欲しい。


 自分の都合で振っておいて本当に自分勝手だ。でもどうしたらいいのかなんてもう分からない。ただもう決めたんだ。自分素直な気持ちを和泉に伝えるって。


「大樹くんどかした?」


「ううん。なんでもないよ」


「そっか。とにかく今日はありがとね。急に誘っちゃったのにいいよって言ってくれて私、すごく嬉しかった」


「い、いや。俺も誘われて嬉しかったっていうか……」


「そうなの!? えへへ。もっと嬉しくなっちゃった」


 もうやばい。和泉が可愛すぎてこのまま抱きしめてしまいたい。もうこの場で好きだと伝えたい。


 でもグッと飲み込む。こんな駅の改札というムードも何もないところで告白するわけにはいかない。


 そのあとはお互い部活の話とかをしながら目的地の最寄り駅へと降り立った。


「やっぱり人多いね」


「そうだな。俺たちの地元とは大違いだ」


 やって来たのは俺たちが住んでる県で一番の都市部。電車で20分くらいのとことで改札を出るともうやばいくらいにクリスマス。


 俺たちの地元のクリスマスイベントが小規模と思わせられるくらいに駅前は大規模なイルミネーションとかが光っている。何人ものサンタがビラ配りしてたのはちょっと可笑しく思えた。


「ちょっと時間まで時間があるからステージショー見ていこっか」


 ということでダンスショー30分程見て目的地にいくことに。


 今は夕方でサラリーマンの帰宅ラッシュの時間のはずなのにスーツ姿の人はどこにもおらずカップルだらけ。


 いい時間になって移動を始めた俺たちはそんな人だかりの中を通り抜けていった。


「じゃじゃーん目的地はここだよ」










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