第5話 お誘いと決意

「明日、どこか一緒に出掛けませんか?」


 メッセージアプリのトーク欄に表示されたこの文字を見て俺は声を出せずにいた。


 まず考えたのはこれは部活の連絡でこういうメッセージを送って来たという可能性だ。


「なあ修、今マネージャーから何か連絡来たか?」


「ん? あぁ、来てるな。グループに来てたよ。明日の部活は中止だってやつだろ? これでクリスマスはリア充を見なくて済むな。家でゴロゴロしていよう」


「グループに?」


 確認すると確かに和泉との個人チャットの上のソフトボール部連絡用グループにメッセージが来ている。


「明日の部活はお休みです。先生が楽しいクリスマスを過ごして下さいって言ってました。26日は朝からです」


 その後に可愛らしいスタンプが添えられていた。この感じ部活のことで俺に何かあったわけではなさそうだ。


 となると、これは……まさかデート!? まさかもうアピールってのを始めるのか!?


 そう考えたら急に心臓がドキドキし出した。クリスマスの日に好きな人と2人きり。


 いや待て。2人きりと和泉は言っていない。もしかしたら友達を誘ってどこかへ行くとかなのなも知れない。ここはどう返信しよう?


「いいよ。誰か友達誘った方がいい?」


 この時俺に断るという選択肢はなかった。告白は断っておきながらこうして和泉と会いたいとか思ってしまう俺がいる。


 これだけ好意を寄せてくれていることに嬉しいという感情と同時にあんなつまらない理由で断ってしまったことに申し訳なさ。本当にこれからどうしよう。


 ピロン♪


 いろいろ考えているうちに和泉から返信があったようだ。


「2人きりがいいです」


「これは……」


 2人きりということか。もうこれってデートだよな。男子と女子が2人でどこかに行く。これはデートって言うことでいいよね? それもクリスマスに。


「分かった。時間とかはどうする? 俺はいつでもいいんだけど」


 そう送った直後に返信が。


「なら夕方4時に駅前の時計塔のところでいいかな? 急に誘っちゃってごめんね」


 嬉しそうにはにかむスタンプとペコリとお辞儀するスタンプが送られてくる。そして「楽しみにしてるね! おやすみなさい!」と綴られていた。


 これまで必要最低限の連絡とかでしか使っていなかった和泉とのトーク欄になんだか恋人同士みたいな会話が残ってる。


「ふぅ。俺ちょっともう寝るわ。疲れたし」


「お、今日は早いな。まぁおやすみ」


「くりぼっちばいばーい」


 最後ひどい発言もあったけど気にせず俺は通話から抜けた。そして一息つく。


「本当にあんな理由で断って良かったのかな……。いや、ダメだろ。俺だって和泉のこと好きなんだ。ここでチャンスを逃したら絶対後悔する」


 今は和泉も俺にこうしてアピール? してくれているがそんな状況はたぶん長くはないだろう。


「本当のことを言ったら和泉はどんな反応するだろう」


 怒るだろうか。それとも呆れてしまうだろうか。


 どうなるかは分からないけど俺だって好きって伝えたい。どうしようもないくらいに自分勝手なのは分かってる。


 それでも……。俺は和泉と一緒にいたい。


 俺は決心した。








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