第3話 好きになった理由〈side瑞波〉

「ひっくひっく。ふぇ~ん」


 私は枕を濡らしていた。理由はもちろん大樹くんに振られたからだ。大好きな大樹くんに振られたという現実がグサリと私も胸を抉る。


「絶対いけると思ってたのに。どうしてなの……?」


 誰も居ない部屋で誰かに尋ねるように私はつぶやく。もちろん返答は返ってこない。


「はぁ……私のこと好きになってもらうとか言っちゃったけどどうしよう。ううん。まだまだチャンスはあるよね!」


 嫌いと言われたわけでもないし、大樹くんに彼女さんがいるっていう事を聞いたこともない。つまり大樹くんはフリー。


 ただ、私を女の子として見ていたんじゃなくてマネージャーとして見ていたから今回は告白に応じてくれなかっただけなんだ。だからもっと私を女の子だと、恋愛対象として見られるようになれば良いってこと。


「そういえばいつくらいから私って大樹くんのこと好きだったんだろう」


 はっきり覚えているのは中学3年生の県大会予選の試合。これまでずっとベンチメンバーだった大樹くんが大活躍した試合だ。


 女子のソフトボール部のみんなと同じ会場で試合をしていた男子の方へ応援に行ったんだっけ。その時に見た大樹くんはとても輝いていた。


 試合とかで活躍するのはかっこいい。ただ、私はみんながいう「今」だけを見て思ったんじゃない。





 大樹くんはどちらかと言えば小柄に分類される方で部内でも一番小さかった。中学からソフトボールを始めたのもあるのか肩も弱く、バッティングも全然だめだった。


 なので一年生の時はベンチ外。二年生でようやくベンチ入りできたけど、試合に出たことは無い。三年生でも試合に出たのは数回。それも負け試合で最後ちょっと代打で出るとかそんな感じだった。


 ただ、これは監督やチームメイトが悪いとかではない。勝負の世界はシビアだ。学年関係なく上手い人を使う。それは当たり前だと思う。


 でも私は大樹くんの努力を知っていたから。いつも練習が終わった後も自主練したり、自分に出来ることを模索したり。出来ないって嘆くんじゃなくて頑張る姿に私は心惹かれた。


 だからこそ大樹くんの努力が実ったとき私はたぶん誰よりも喜んだ。もしかしたらその時に私が大樹くんのこと好きだってばれたかもね。


 学校生活でも優しいし、かっこいいしいつの間にか大樹くんを目で追うようになっちゃった。


 高校に入ったら大樹くんのサポートをしたいと思ってマネージャーになった。


 いつもより近くにいる大樹くん。それだけでも幸せだったけどそれだけじゃもう私足りなくて……。もっともっと大樹くんと居たくて……。


「って私ったら落ち込んでどうするの! 今考えるのはどうやって大樹くんを落とすかってことでしょ」


 パンパンとほっぺたを叩いて気合を入れる。そこでふと窓を見ると……


「雪だ……きれい」


 小降りではあるけど雪が降っていた。


 ホワイトクリスマスだ。もしかしたらこの雪の中、大樹くんと一緒に帰れてたかもしれなかったのに。


「ちょっと気分変えるためにお風呂入ってこよう」


 私はそう言って部屋を後にした。






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