第4話

「ファーストガンダムのことは詳しくないんだけど、シャアはララアのこと、好きじゃなかったのかなって思うときがあるんですよね。でも凄いララアのことずっと引きずってるし」

「それだったら、アムロはなんでララアのこと倒したんだって話だ」

「ですよね? ララアがいるから、戦争はダメなんだなって思うんだけど、シャアの恋人じゃないんだなって思うと、やりきれなくて」

(遊びだったのか! 恋人かと思ってた!)

 比呂に少なからず衝撃が走り、ますますララアの存在が分からなくなる。

 再放送で見たとき、ララアの存在がどれほど困惑に陥れたか。でも、ララアがシャアの恋人であれば、ララアは自らシャアの言いなりになっていたのだなと説明がつく。アムロはいつもララアことを想っていたし、あのふたりはララアを取り合っていたと思う。

やっぱり分からなくなる。

「シャアがガンダムUCで復活したと思ったのに、ナラティブで作られた存在だってことになっていたじゃないですか」

「そ、そう! そうだよね! そうそうそうそうそう」

(俺のターン!)

 比呂はにこっと笑い、何度も見たガンダムUCの話に安堵する。けれど、女性は深いため息を吐くと、アッシマーの箱をぎゅっと抱えた。

「ララアがあそこにもいましたよね。ユニコーンの世界で、アムロと一緒に」

「うん。そうだった」

「あの世でも三角関係なのかと思うと、シャアが可哀そうで。私シャアが好きなんで、ララアと上手くいって欲しかったんです」

「あ、そうなんだ」

 熱弁を奮う女性は、怒りと悲しみのあまりに目に涙を称えている。

 その光景を見て、比呂はぎょっとした。

(俺が泣かしたみたいじゃないか)

「ああ。あのさ! そういえば、アッシマーって……モビルアーマーだよね?」

「そうです」

(俺の勘、冴えてる!)

「じゃあ、Zガンダム好きなんですか?」

「一番好きです。モビルスーツもカッコイイし、物語も主人公の気が触れる形で終わるなんて、切ないじゃないですか!」

「カミーユだっけ?」

(なんとなく覚えてる。ただ、なんでそうなったか忘れた)

 比呂は作り笑顔で誤魔化すと、女性はにこっと笑い、アッシマーを見つめている。

 思えば、彼女がこの店に来たのはこのモビルアーマーが欲しかったからだ。しかも、三体。

「ケネディ宇宙港の激戦を再現をしたいんです。私はまだまだ『にわか』ですけど、あの戦いを再現して、インスタにアップしたいなって」

 女性は満足気に言うものの、比呂にはさっぱり分からない。しかしひとつ分かることがある。彼女のインスタの使い方が普通の女の子と違うことだ。

「インスタにガンプラ載せてるの?」

「当たり前じゃないですか! ツイッターだと、にわかだって言われるから」

(俺が正真正銘の『にわか』だけどな) 

 比呂は満面の笑みを浮かべつつ、しれっとした表情でスルーする。

 この真面目な話の中でにわかだとバレたら大変なことだ。

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