『のら VS どら』
やましん(テンパー)
『のら VS どら』
『これは、すべて、夢です。フィクションであります。似たような名前の地名や施設名があったとしても、この世とは、一切、何の関係もありません。』
ある晩のこと、旧袖ケ浦の壊れたジャンクション付近に、大量の、『のら・ゴキ軍団』が集結していた。
一方、同じころ、対岸の旧浮島付近には、これまたさらに大量の、『どら・ねずみ軍団』が集結していたのである。
さらに、旧富津公園付近には、『どら・ねこ軍団』が陣を張り、旧観音崎公園付近には、『のら・ねこ軍団』が集結していた。
また、情報によれば、鋸山近辺には、『のら・わん』の大集団が控えており、一方で、久里浜付近にも、『どら・わん』の巨大集団がいるとのことであった。
人類亡き後、この国の支配者は誰なのか?
まさに、その決戦が始まろうとしていたのである。
動物園にいたいわゆる猛獣たちも、支配権を狙ったのではあったのだが、多勢に無勢とはこのことであり、地元勢力には歯が立たなかったらしい。
ただし、パンダさんなどの、おとなし組は、なかなかお家からは、動かなかったのだが、食料が尽きてしまったため、旧都内を転々としていたのである。
彼らには、覇権を奪うというような考えは、そもそもなかった。
あくまでも、『考えが』なかった、と言うことである。
袖ケ浦から海を渡る『のら・ごき軍団』と、浮島から渡った『どら・ねずみ軍団』は、しごく当然に、『旧海ぼたる』付近で激しい闘いとなった。
どっちも、数という点では、ほぼ、自分たちには数えられないくらいの数だったのである。
しかも、『ごき軍団』は、旧やましんさんちの、さまざまな情報網から、知識を蓄えていたし(つまり、たいしたことはなかたのだ!)、一方、『ネズミ軍団』も、もとはといえば、やましんさんちの『ちゅう軍団』からの生き残りが多かった。
しかし、その自分たちの素性を知っているものは、もはや、ごく一部の、よれよれの長老だけであった。
闘いは、深夜に始まり、明け方近くになっても、大勢は決まらなかった。
『海ぼたる』付近の海上は、双方の討ち死にしたものたちで、溢れてしまい、海面さえ見えなかったと伝わる。
そのときである!
昇る朝日に照らされた、大きな鐘楼のふもとに、なにやら、ぱぱっと!激しく光るものがあった。
『あれは、なんだろう?』
ごきたちも、ねずたちも、目を見張った。
彼らは、いったん争いを中止して、その、光り輝く場所に集まった。
そこには、金色の乳母車に乗せられた、小さな生き物が寝かされていた。
その周囲は、見えない何かで覆われている。
『こりゃあ、なんだ、いったい。なんの生き物だ!』
『ごき・中佐』がうめいた。
『むむむむ。見たことない、ひ弱ないきものらしいが、見えない壁があるようで、食えないなあ。』
かれらは、特殊強化プラスチックの覆いを突破できないのだ。
『長老を呼べ!』
双方が、そう言った。
すると、板の上に乗せらえた、ぼろぼろの『ごき』と、同じく台所のプラスチックまな板に乗せらえた、ふらふらの『ねず』が現れたのである。
『おおお~~~そなたは?』
『ごき』がうめいた。
彼こそは、伝説の英雄、やましんちの『ゴキ大将』の年老いた姿であった。
いっぽう、『どす白いねず』は、これまた、やましんちにいた、あの、『いえねずみ女王』であった。
『なんと、そなた、生きておったか。』
『あんたこそ、しつこいちゅう。』
『おたがいだ。して、問題は、これかな?』
『は! 長老。』
『むむむ。これは、ひとの子である。』
『まさしく、ひとのあかちゃんだ、ちゅう。』
『なんと、あの、滅亡したという、ひとの・・・・・しかし、なぜ?』
『むむむ。おそらくは、ひとの技術により、人工冬眠していたのであろう。なにかの衝撃で、出て来たものか。』
『こりゃあ、また、やっかいな。』
『やはり、食いましょう。』
『まてまて、ひとの子供には、毒がある。喰えば、死ぬぞ。』
ゴキ大将が、そう、言ったのである。
『ひえぇ~~~~~~~!!』
周囲の『ごきども』も、『ねずども』も、一歩引いて騒ぎ出した。
『ま、一番良い方法は、ほっとくことよのう。』
『ほっとく?』
『そうである。このまま、にしとく。ま、なんかに、なるであろう。いかがか?』
ゴキ大将がねずみ女王に尋ねた。
『うん。それがいいちゅ。さわらぬ『ひと』に、たたりなし。それこそが、長年の教えであったちゅう。』
『さよう。』
そこで、両軍は、ひとのあかちゃんと、さらに自分たちの『大将』と『女王』は、ほっといて、戦いを続けたのであった。
『いやあ、ひさしぶりだなあ。』
『ほんとにちゅ。い、いっぱいやっか。もう、あたしたちは、残り少ないちゅ。よく生きてきたよちゅう。やましんさんちのあの、『ぱわーごはん』が、よほどよかったみたいちゅ。』
ひとのこどもを囲みながら、ゴキ大将とネズミ女王は、酒を酌み交わしたのである。
『なんで、あんな、うぞ、言ったちゅ? 毒があるとかっちゅ?』
『なに、なんか、やましんさんを、思い出してな。』
『そうちゅか。うん、かあいいなあ。お~~~、よちゅよちゅ!』
そのさき、どうなったかの記録は、双方ともに、さらに、わんたちも、また、一切残さなかったので、まったく、わからない。
なぜか、このあたりだけ、ごきか、ちゅうか、の、どちらかが、やましんさんがのこした、デジタルビデオに収録していたが、最後は、時間切れに、なったらしい。
『どら・わん』や『のら・わん』も、直後に、この付近で戦ったらしいことは、発掘調査で、わかっている。
ただ、やがて、この橋の奥底に眠っていた、このあかちゃんと仲間の、ハイパー人類が現れ、それらのごたごたを、あっけなく終わらせ、再び地球を支配し、新種のごきや、ちゅうや、にゃんこや、わんこと、ふたたび、楽しく生き続けたことは、だいたい、わかっている。
が、それもまた、いまは、夢の中に消え去った。
結局は、同じように、ひとは戦争して、消えたのである。
まえよりも、もっと、きれいさっぱりと。
いま、この地球を支配するのは、われら『ウルトラ・ハイパー・ぱんだ』族の子孫たち、である。
よのなか、わからないものなのだ。
************ 🐼 ************ 🐝 😹
いちおう、おしまい! 『パンダの惑星』に続く、つもり。
『のら VS どら』 やましん(テンパー) @yamashin-2
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