第76話
ここはどこだ? この場所に訪れたものは初めにそう思う。
何故そう思うのかはわからない。しかし、人についてわかっていることが少ないようにこれがわからないことは誰しもにとって恥ずかしいことではない。
それから、自分の体や床を触ったたり、歩いたり、飛んだりして何かを何かを確かめようとする。
多くの者がここまでで何も見えていない暗闇に自分がいると感じているのだ。
しかし、そうではない。この場所は明かりがないわけではない。
ラ・マが入ってきたものの意志力を多い包むことによって、暗闇に居ると錯覚を起こさせているに過ぎない。
この時点で暗闇に包まれている人間は意志力に置いてはラ・マに劣っていると言えるだろう。
多くの者が意志力ではラ・マに勝てない中、今入ってきている人物は違った。
この場所にあるものを目で見ることができている。
この者が意志力に置いてラ・マに勝っているという証拠だ。
ラ・マにとっては確かめるまでもなくわかっていることだが、
「……!」
自分の力で体感して目を大きく見開き、口角の上昇を止めることはできなかった。
これまでで最短でラ・マを目の前に呼び出した人物は落ち着いた様子で、
「すみません。道に迷ってしまったのですが」
とラ・マに言った。
ラ・マの店はどう見ても道に迷ったで済む場所ではない。
そもそも屋内であり、入るには扉を開けなければいけないと考えるのが普通だ。
だが、本人の心のありようを写すラ・マの店は人物の心もそのままに表していた。
ロ・マが言うには、
「今までにいたことのない天才だ」
という期待をラ・マは店の有り様を見て胸を高鳴らせた。
ラ・マにとってのそれは二戸部勇気以来の出来事だった。
ラ・マの店は今、草原の中にある。
店というよりも階段と商品が置いてあるだけの場所でしかないそれは、人物にとっての救いだった。
人物は言葉通り迷子だった。
ラ・マの店の近くに足を踏み入れたことで辺り一帯が無限の草原へと変化したことで一歩戻っても元の空間に戻ることができなかったからだ。
ラ・マの店はあらかじめ期待のかかった人物が敷地内もしくは、周辺に来た瞬間に店内へといざなう加工が行われている。
それによって、今まで多くの人間が客として、それだけでなく客を導きやすくするための環境づくりとして、誘い込まれていた。
今の人物は最初はあくまでも客の一人という認識だった。
しかし、ロ・マが占った結果によって環境整備の一員にしたほうがいいとラ・マが判断したのだ。
ラ・マの店で客として認められるには強欲であることと、金を持っていることの2つが必要だった。
人物は表立ってそのどちらもをひけらかしているタイプの人間ではないようだ。
第一に着ている服が安い。その安さは誰もが知っているであろう安さが売りの店の物だということが表している。
そして、第二に、
「すみませ~ん。聞いてますか?」
誰に対してもていねいな言葉遣い態度が人物の印象を良くしている理由の一つだからだ。
「ようこそ、ラ・マの店へ。ここにはあなたの望むものが何でも置いてあります」
「…………はぁ……」
人物はラ・マの言葉で表情を失った。
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