第45話

「これなんだと思う?」

 僕が取り出したのはスカートのポケットに入っていた。ピンク色の小さな玩具のステッキのようなもの。

「私も持ってますよ」

 ナビが取り出したのは形は同じだが色が青に近い、色違いのものだった。

「どう見ても魔法少女じゃないか?」

「魔法少女?」

「まあ、自分は詳しくは知らないんだけど、もし、これのステッキが、石に変わる新しい変身アイテムだとしたら……」

 僕は想像してしまった。

 自分がまるで女の子の憧れの存在の一つであろう存在として、クマ人間の次に活動している姿を。

 傍から見る分には、ああいいな、という感想を抱くかもしれない。

 しかし、それが、もし、自分だったら? そう考えるとゾッとする。

(せいかーい)

 その声は久しぶりにやってきた。

(お久しぶりです)

(さっきあったばかりじゃないか)

(そうですけど、こうやって話すのは久しぶりじゃないですか?)

(そうかもしれないね)

 突然クイズの答えを言ったようなラ・マさんは僕の無駄話による時間稼ぎを振り切って本題を話し始めた。

 聞いてしまえば、もう、逃げられない。

 しかし、心に直接話しかけることを回避する方法は未だ見つかっていない。

(そのとおりで、それで変身して活動してもらう)

(それって、僕に拒否権は……?)

(ないよ)

(ですよね……あれ、ということは?)

(お気づきだね。その通り、ナビにも働いてもらう)

「私もですか?」

(そうだよ)

 いよいよ、頭がこんがらがってきた。

 今の状況についてもそうだが、今後の状況についてもそうだ。

(つまり?)

(説明しておこう。ナビは俺の声と君の声が聞こえる)

(ナビはラ・マさんの声と僕の声が聞こえる)

(俺は、ナビと君の声が聞こえ、どちらもに呼びかけることができる)

(なるほど)

(それで、今回、君と、ナビにはいっしょに活動してもらう)

 なぜ今までもそうしてこなかったのかは謎だ。

 それに、ナビの声は直で聞かないといけない。

「わ、わかった? ナビ?」

「私も一緒にできるんですね?」

「え、そうみたいだけど」

「やったー」

 どうやら、ナビは嬉しいらしいが、自分の見た目が変わることについてはどう考えているのだろう?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る