第43話
「やばい、遅刻するよ。どうしよう! ナビ」
強い朝日が久しぶりに目を刺した。
商店街の時計はとっくに普段通り過ぎるときの時刻が過ぎ去ったことを示していた。
「大丈夫です。走れば間に合います」
そう、来ていたのは自分が見慣れた自分の通っている学校の女子制服だった。
ナビについていく形で全力疾走を始めた。
体はほとんど動かさない4日ほどが続いていたはずだが、ラ・マさんに臨戦態勢を整えたときにも反射に体が追いついたほどで魔法ではないと本人はいっていたがさすがの回復力だと思った。
それ以降はとにかく次の電柱、次の電灯を目指して前に進むことだけを意識して走った。
スカートがTシャツだけで走っているようなヒラヒラした感じがして寒かった。
よく、ナビは無事だなと思ったがそれすら声に出さずに走った。
これまでの鍛錬のおかげかなんとか学校には遅刻せずにすんだ。
「これを」
「これは」
「今の勇気さんの情報です」
書いてある内容はまったくもって僕のものではなかったが、しかし、見た目にあった内容を用意しておいてくれたらしい。
「転校生の紹介をします。入ってきて」
「はい」
「名前を」
「獅童ゆう。といいます。よろしくおねがいします」
「獅童さんはなみさんの双子の妹さんです。えー仲良くしてください」
そこからはナビの転校してきたときと同じ様に質問の嵐だった。
「なんで、別々で転向してきたの?」
「それは、家庭の事情で僕は遅れたんだ」
「へぇーボクっ娘だ」
「そうだね。僕って言うよ」
「キャラじゃなくて?」
「うん」
「家はどうするの?」
「えーと、二戸部くんの家だよ」
「マジかよ~」
「そういえば、今二戸部くん大変そうだよね」
「え? えぇ」
これらは全て台本の内容だ。
僕はそれを諳んじて言っているだけだ。
決して自分の都合のいいように書き換えたりしていない。
授業に関しては慣れない体で、と言うよりも、身軽さが楽につながった気がした。
体育の授業はなかったが前の自分よりもうまくやれそうな気がする。
そんな、ゆっくりすることのできない目まぐるしい一日を過ごしきった。
やってきたのはやはりいつもの商店街。
「体、大丈夫ですか? 病み上がりなのに無理してませんか?」
「体は意外と大丈夫なんだけど、まさかナビの妹になってるなんて」
「本当ですよね」
「ラ・マさんめぇ」
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