第38話
入り口まで何事もなかったのように移動でき、後は帰るだけだった。
「フンッ」
突然現れたのはボスと瓜二つの見た目の男だった。
「クソ」
吐き捨てるように言った理由は僕が初撃を難なく受け止めたからだろう。
「高速接近してくる物体があるとか言ってたからドローンかと思ってたが、まさか、クマとは」
「残念だったな」
僕はそれだけ言って、謎の男に刃を向けた。
しかし、剣は当たらなかった。もともと直撃はしないが、始めて回避された。
「危ない危ない。見てなかったら当たってたよ」
「どういうことだ?」
「あの機械よくできたろ?」
「機械?」
「気づかなかったか、お前が戦ってたのはロボットだったの!」
自分は気づいていなかった。どこまでもなめらかに動き話していた。あの男が機械だった?
「まさか」
「ウケるね。ただの鉄くずにあのクマ人間が翻弄されてたんだからさ」
途端に饒舌になった男のすきを突いて僕は最後の斬撃を浴びせた。
そこからはとにかく走った。走って走って走りまくった。
それ以上の手を考えることができなかった。
「無理しないで」
「大丈夫だから」
優美ちゃんに心配をかけたくなかった。
そして、走った末に、未だ道路に横になっている山村の姿を見たところで僕の記憶は途切れた。
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