第35話

 廃工場はとにかくさびれていた。

 機械の音も何も聞こえないはずの今では使われていない工場だった。

 しかし、自分の予想通り中には少女を連れ去ったと思われる黒服集団に所属しているであろう人物がコンビニ前の不良のようにたむろしていた。

「おいおい。勝手に入ってこられちゃ困るんだよ」

「おい。待て、こいつ噂のクマ人間じゃないか?」

「どうせ、ただのキグルミだよ。コスプレか何かなんだろ?」

 僕はそこまで調子づかせてから、ただのチンピラの3人の内2人をラ・マさんからもらったヤミの剣で切り伏せた。

 切られた2人はその場で気絶したものの出血がないためその様子に剣をおもちゃと判断したのであろう残りの1人は、

「へっ、おいおい。どうなってんだか知らないが、俺がこんな子供だましに引っかかるかよ」

 と言って、殴りかかってきた。

 僕は、その拳を躱し、ヤミの剣を喉元へ突き出し、

「少女はここか?」

 と問うた。

 男は僕の能力、動きを見て自分の誤りを認めたのか素直に話してくれた。

 少女――優美ちゃんは確かにここにつれてこられた。ということしか男は話さなかった。

 それ以上は、

「俺はただの見張りだったんだ。この2人見たくなりたくない。殺さないでくれ」

 しか言わなくなった。

「いいだろう」

「本当か?」

「ああ、ただし、正直に話すんだ」

「何をだ?」

「少女について」

「俺は本当に知らないんだ。信じてくれよ!」

「そうか、残念だ。交渉決裂だな」

「そんな、ふざけるな」

 僕は最後まで言葉を聞かずに入口付近、最初の空間に居た男を切り倒した。

 入り口ではまともに情報を得ることができなかった。

 廃工場自体は僕が思っているよりも大きそうだ。

 優美ちゃんは無事か? このままでは間に合わないのではないか。

 そんな焦りばかりが湧いてくるが意識から振り落とし僕は更に部屋を進んだ。

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