第33話

 家に着いてから僕は何をしようか考えた。

 別にゲームをしても、漫画を読んでも、勉強をしても良かったのだ。

 ナビの作るご飯を待っていればそれで良かったはずなのだ。

 しかし、自分は歩いていた。

 家に荷物をおいた後外に出ていた。

 見回りの癖が出てしまったのかもしれない。僕にはそれ以外考えられなかった。

 自分の住んでいる街のため過ぎ去る景色はどれも見覚えのあるものばかりだ。

 その先にあるものもきっとそのはずだった。

 着いてしまったのはあの公園。

 自分の思い出にしてしまいたい公園。

 未だ少女との別れの悲しみは癒えていない。一生抱えて生きていくのかもしれないし、明日にはなくなっているのかもしれない。

 が、僕はそんな妄想に浸ることはできなかった。

 見たくもないものがそこにはあった。いや、人が倒れていた。最悪の原因を作った。山村だ。

 僕は、その場では何よりも命を優先した。

「大丈夫ですか? 救急車呼ばないと」

「いや……いい……それより……何でこんな時に……ここへ?」

「なんとなく、でも本当に」

「いいんだ! 大丈夫だ」

 途端、山村の視線は僕がやってきた方とは反対側へと移った。

 無意識的に自分も視線をなぞった。

 先にはよく見えないが、スーツのような格好の男たちが車へと乗り込んでいるように見える。

「止められなかった」

「どういうことですか? 何がですか?」

「お前には関係ない」

「そんな……」

「さすがにわかってるんだろ? 俺がお前にしたことぐらい」

「ええ、でも、それとこれと何か関係あります?」

 自分には山村の考えがわからなかった。

 彼はいったい何を言いたいのかがわからないための言葉だった。

「わからないならわからないでいいんだ。関係ないからな」

「だからって困っている人を見捨てる理由にはなりません。息は整ったようですが未だに立ち上がれてないじゃないですか」

 山村の呼吸の浅さは解決していた。しかし、彼は未だに地面に横になったままだ。そして、あの日に感じた怪物のようなオーラは感じ取ることができない。

 弱っていることはオーラを感じなくとも火を見るより明らかだった。

「話してください」

 山村は表情に悔しさをにじませたがそれ以上の抵抗はなかった。

 簡潔に言えば少女――優美ちゃんが目の前の黒服に連れ去られたとのことだ。

 それだけ聞いて僕はその場をあとにし走り出した。

 聞きたいことは色々あったがそんなことは後回しだ。

 今は優美ちゃんが第一だ。

「だから、君だったんだろうな」

 最後にそれだけ聞き取れた。

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