第31話

 翌日。

 早速、剣を扱ってみた。

 自分の部屋に戻ったときにはどこを探してもなくなっていたことから一瞬にしてなくしてしまったかと思ったが変身後に腰に下げられていた。

 変身後の感覚が今までと違い腰にずしりと重みがあるのは慣れるまでに時間がかかるだろうと思った。

 生身でも扱えるように素振りのトレーニングを始めようかと思っていた自分としては肩透かしな感じだった。

 しかし、使ってみると効率は圧倒的に良くなった。

 どれだけ自分が走り回るよりも悪意を切る。その行動は簡潔だった。

 今までなら、ナビやラ・マさんが、

「悪者です」

 と言ってくれて、それから強いだの弱いだのの情報をもらってから現場へ行っていた。

 もちろん、今もそこは変わらない。剣を使用しない軽いときもまた変わらない。話しかけて注意するだけだ。

 大抵それでなんとかなる。

 自分の考えだが、人はそこまで強い存在ではない。

 だから、注意を受けると殆どの場合はタイミングじゃなかったと考え諦める。

 しかし、弱い存在だからこそ、一度一つの思考、思い込みに囚われて人の話を聞くことができなくなると、なかなか抜け出すことができなくなる。

 そこで、ヤミの剣だ。

 ある程度の距離から、

「ハアア!」

 と切ると、ふっと問題は解決する。

 断然ラクだ。今までなら石の力で変身してどうにか気を失わせるなどする必要があった。

 その後のことはラ・マさんに任せていたため詳しくは知らない。

 しかし、多くの悪者を相手にしないといけないのなら、ラ・マさんの力を借りずに問題を解決して次に移れるのは成長だ。与えられた力だが。

 自分だって、自分で気づいて立ち止まり問題を起こさないほうがいいと考える。

 しかし、全てそれで解決するなら人は問題を起こさないのだ。

 どういう原理で悪意を切っているのかはわからない。聞いても理解できないだろう。

 だが、どれだけの悪者にも悪いことをさせないのが僕の今の目指すところだ。

 少しずつ修正して自分の力で解決できる手助けとして活動したいが、ラ・マさんの依頼のため断ることができないのも今は心の引っかかりだ。

 しかし、生身での問題解決やトレーニングの再開は確実に自分のためになっている。そう思っている。

 答えはない。しかし、後から考えて後悔するような行動は止めるべきだと思う。

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