第29話
目の前には泣きじゃくるナビが居た。
「良かった。良かった」
「どうしたの?」
「心配したんですよ。帰ってこないから」
見ると、空は黒く染まり、自分は山村と話していた時に立っていたその場所で横になっていた。
「気絶してた?」
「はい。何を言っても起きなくて、それで」
「もう、大丈夫。嘘じゃないよ」
「はい。信じます。ずっと、信じてます」
僕には自分のために涙を流してくれる人が居る。
僕を信頼してくれる人が居る。
僕のことを心配してくれる人が居る。
「動けるよ」
「良かった。良かった」
「泣かないで、きれいな顔がだいなしだよ」
「はい。はい」
それでも彼女の涙は止まらなかった。
安心したのか口元には笑みが浮かんでいた。
いつまでも透明のしずくを流し続けるナビを抱き寄せた。
ナビは僕の胸の中で嗚咽を漏らしていた。
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