第20話
帰宅まで本当に何もなく、問題がなにもないのが現実なのかラ・マさんに呼び出されることもなく時間は過ぎていった。
そのため僕はいつもよりも早く少女の優美ちゃんのいる公園へ向かった。
ナビの目を盗むことができず、そもそも目を盗めても耳まで盗めないと一人で家を脱出することはできないのだが、まあ、だめだったので結局今日もナビとともに公園に行くこととなった。
「本当に平和ですね」
「ああ、この石をもらって以来毎日何かしらどこかで起きてた気がする」
「きっと、ラ・マ様も休む許可を出してくれているのですよ」
「そうだといいな」
「大丈夫です」
ナビがそう自信を持っている姿に自分は笑ってしまった。ひどいですよ。と言っていたが心から嫌がっているわけではないことがわかった。顔は笑っていたからだ。
出会った頃に感じていた。異物に対する恐怖心がここまで拭われてしまうものかと驚いている。
もちろん、声に出さない。心を読まれていることもわかっている。
だが、僕の心の変化はナビが一番わかっている。
自分では自分のことは自分が思っているよりもわかっていないものだ。
自分のことをずっと見ていてくれているナビはありがたい。
「こんにちは。優美」
「こんにちは。なみ」
「こんにちは。優美ちゃん」
「……」
相変わらず昨日のことは根に持たれているがそれは仕方なかった。
そして、いつもよりも早く公園に来たが優美ちゃんはいつもどおりそこに居た。
今日もまだ疎外され遠くからナビと優美ちゃんの会話を聞くだけだった。
ただ、それでも今日は良かった。いや、今日も良かった。
楽しそうに何事かを話す二人の姿が自分を癒やしてくれた。
だから、安心していた。安心しようとしていた。こんな日がずっと続くと自分に言い聞かせていた。
嫌な予感はまだ残っていた。けど、現実は自分の思っていた以上に暖かいんだってそう信じたい気持ちが強かった。
もしかしたら、ラ・マさんに会ってから自分の感覚が少しずつ狂っていたのかもしれない。
嫌な予感からは逃げられないと思っていた。
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