第16話

 翌日以降、僕は日課のように少女に会いに行った。

 家族の仲も良くなり、ナビやラ・マさんにロ・マさんと仲間はできたがそれでも僕は自分を一人だと思っていたのだと思う。

「無理するなよ」

「うん。わかってる」

「行ってらっしゃい」

「行ってきます」

「無理してませんか?」

「大丈夫だよ」

(今日も商店街の近くだ)

(はい)

「よくやってるね。ご褒美に未来を占ってあげようか?」

「大丈夫です」

 どのやり取りもかけがえのない大切なものだ。

 ただ、物足りなさが出てきていたのかもしれない。自分が欲張りなのかもしれない。

 学校でも今まで以上に話そうとはしているがうまく行かず。

 親との関係は家族以上のものではなく。

 ナビやラ・マさんにロ・マさんとの関係も今となっては仕事仲間の関係だ。

 もちろんどれも大切だ。

 それは理解しているつもりなのだが、何かが常に自分の中に欠如している感覚が拭えていなかった。

 少女に話しているときはそれがなかった。

「今日は――」

「明日は――」

 ととりとめもなく話していることに最近では相槌も打ってくれるようになった。

 人と人との関わりがここまで暖かいものだとは思っていなかった僕は感動した。

 また、話したい。また、あの声を聞きたい。

 僕も少女も一度も約束をしたことはなかった。

 それでもいつも同じような時間に僕は少女と公園で話した。

 そして、決まって少女のほうが早くからいて、遅くに帰るのだった。

 疑問ではあった。なぜ、少女が公園に一人でいるのか。なぜ、少女は自分よりも遅くに帰るのか。

 しかし、会話をするようになってもそのことは聞かなかった。

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