第10話
朝の時間もあっという間だった。
目が覚めるなり隣にナビが居て、
「悪者です。すぐ行きましょう」
と怒鳴るのだ。
「悪者って言ったって怪物とかそういうのじゃないでしょ。連日はいいじゃん」
「いけません。どうなっても知りませんよ」
そこまで言われると何もしないという気持ちを吹き飛ばして体を起こさないわけにはいかなくなる。
「はあ」
一つため息を付いて嫌な気分を吹き飛ばし、学校に遅刻しないように一応着替えも持って家を出た。
「朝食です」
「ありがとう。あれ? 母さん起きてなかったよ?」
「私の手作りです」
「なるほど」
目的地へ走りながら、ナビの手作り朝食を頬張った。
走りながらでも食べられる一口サイズのおにぎり、サンドイッチは朝の空腹を吹き飛ばした。
「うまい」
「ありがとうございます」
頬張れるだけ頬張りこれまでにない朝食での満足感が得られた気がした。
「ありがとう」
「ナビですから」
「と言うか僕、寝間着じゃん」
流れで制服を持つだけ持って着替えもせずに出てきていたためはっきり考えていなかったが自分は今寝間着で外を疾走していた。
「いけませんか?」
「いけないっていうか、恥ずかしいなって、ナビは思わないの?」
「わかりません」
「おい、ラ・マ、ナビに感情はないのか?」
(敬語が口についてきたかと思えばこれか。そして、俺は別に君の便利グッツじゃないんだよ)
(つい寝ぼけて、それで、感情はありますか?)
(あるよ。俺がやったことは大した魔法じゃない。子供だましみたいなもんだ。すべてをそっくり変えたわけじゃない。ただ、見た目と中身が少し変わっただけだなんならナビの胸をもんでみたらいい)
(おい、何いってんだだめだよそんなことしちゃ)
「私は構いません」
「構ってよ。そこは否定してよ」
「まあ、どうしても嫌なら強制はできないな」
「あんたが言うか、僕にこんなもん持たせやがって」
左手首の石を壊さないように優しく叩いた。
昨夜は気分を損なわなければ大丈夫とか言っていたが、石については直ぐに損ねそうだと自分は思っている。
どれだけ頑丈なのかはわからないがあまり勢い良くは叩けない。
(テヘ)
(可愛くないわ! ふざけるな)
(可愛ければいいのか? そうか、なるほど)
(お前自分の見た目変えても騙されないからな)
(お、いったな)
これもラ・マさんの策略かそれとも単なるお遊びか、自分にはわからないが主目的を忘れるほどリラックスすることはできた。
(忘れるなよ)
(冗談ですよ)
「急ぎましょうか」
「おう」
両頬を両手で叩き自分は気合を入れ直し、気持ち少し早く移動するイメージを強く持って走った。
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