第8話

「ただいま」

「おかえり、あらなみちゃんも一緒?」

「え?」

「隣の女の子のこと」

「う、うん。そうだよ」

「これからよろしくね」

「はい。お母さん」

「お母さんなんてもう」

「どういうこと?」

 母がリビングへと戻っていくタイミングを見計らってナビゲーターへ小声で尋ねた。

 しかし、ナビゲーターは反応を示さなかった。

「ねぇ?」

 周囲に誰も居ないことを確認しきったのか首振りを辞め僕を見て言った。

「部屋へ行ってからにしましょう」

「それなら、確認必要なくない?」

 僕は自分の家でないような気分で自分の部屋へ戻った。

 ナビゲーターで元男で、泥棒だったとは言え今は女の子と一緒にいるという状況にこれまでにない緊張感があった。

 普段なら一日の疲れで何もやる気は起きないが今はそんな事も言っていられなかった。

 家にも自由はないのだからできる限り知ろうとしないといけないそう考えていた。

(俺が説明しよう)

(だから、さっきの場所でも良かったんじゃ?)

(まあ、落ち着き給え)

(はい)

(簡潔に言おう。俺が親戚の子として預かってもらうということにしておいた)

「はあ?」

「どうかしたの?」

 自分でも思っていなかったほどの大きさの声が出て下まで聞こえてしまった。

 慌てて、

「なんでもない」

 と言う。

(だから君の部屋で良かっただろ?)

(はい)

「そういう訳です」

「親戚の子なのね」

「そうです」

 納得はしていないが自分に言い聞かせた。ナビゲーターは親戚の子。

「あ、あと、ナビゲーターだと長いからナビでいい?」

「私は何でも結構です」

「よし、ナビ、部屋は?」

「ここです」

 僕は自分の耳を疑った。今自分は何を聞いていたのだろう。何も聞いていないような聞かなかったことにしたいような心情はやはりラ・マさんにバレていた。

(何もするなよ)

(しませんから)

 僕は成り行きで女の子と同部屋になった。

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