第6話
「何で泥棒を捕まえなきゃいけなかったんですか?」
「君は本当に質問が多いねぇ。まあ、見ていればわかるさ」
ラ・マさんがそう言うやいなや泥棒が白く光りだした。
人間とは思えないその発光に僕は驚きで声を失った。
次第に強まる光に僕が目を閉じてしまっている間に状況は一変した。
目を開けるとそこには誰もが目を奪われるような用紙を持った少女が泥棒の居た場所とぴったり重なり合う形で存在していた。
「一体これは?」
「一種の脅しの種と君の監視かな」
「それはどういうことですか?」
「君の左手首の石を壊すなり、俺の言うことを聞かなかったらこうなるってこと」
「……」
僕は声が出なかった。自分の中に急激に現れた恐怖に思考を奪われた。
自分が本当にとんでもないことに足を突っ込んだことをこの瞬間はっきりと意識に埋め込まれた。
「そして、このナビゲーターちゃんに君を24時間監視してもらう」
「え?」
「わからなかった?」
「いえ」
自分にプライベートも何もなくなった。そう確信した瞬間だった。
自分はこうして自由を犠牲に力を手に入れてしまった。
僕たちが会話している間に元泥棒の少女は意識が戻ったのか体を起こし頭を振っている。
「目を覚ましたかな?」
「はい」
「君は誰かな?」
「私はナビゲーター。二戸部勇気さんのサポーターです」
「よし」
泥棒の時の記憶がないのかは僕にはわからないがこのラ・マさんの能力はものすごい効果を持っていることがわかった。
彼女はすでにナビゲーターで僕のサポーターらしい。
「よろしくおねがいします。勇気さん」
「よ、よろしく」
僕は差し出された手を握り返した。
自分の見た目もいつの間にか普段の姿に戻っており、肌の感覚があった。
その手はとても柔らかくさっきまで人に刃物を向けていた泥棒のものとは思えなかった。
「緊張してるの?」
「べ、別に」
「まあ、仲良くしてくれよ」
「緊張してませんからね」
そのやり取りをナビゲーターはキョトンと見ていた。
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