34話
「ビックリした。こんな所で沖君に会うなんて。二回目の偶然だね」
「……そうだね」
平打さん。
同期。
同じ営業部……だった。
彼女もまた、首からネームプレートを下げている
くそう。ハコベラの隣はハイドランジアだったのか。
あれだけイドランジアには近づかないようにと気をつけていたのに……
「沖君が文房具のイベントに来るなんて、思いもしなかったよ。一体どうしちゃったの? ちなみに私は、手伝いで駆り出されちゃったんだ」
「へ、へぇ……そうなんだ……。俺は……その、付き添いみたいな……」
今勤務している店の連中に、無理矢理連れてこられたなんて言えるわけもなく。
しどろもどろになってしまった。
「付き添い? それって……」
彼女の視線が、俺の背後にいる志摩さんへといく。
ああ、クソッ!
次々から次へと……!
「沖くーん……」
ぬぅっと、俺たちの間に長船が顔を出す。
まだいたのか、長船!
というか今、君付けで呼んだな!?
「紹介して?」
「……」
何なんだこいつは……と言いたいところだが、今回ばかりは助かった。
「あ ー……彼女は平打さん。俺の同期。営業」
「営業!? マジで!?」
「平打さん……こちらは、ハコベラの営業の長船さん。……俺らと同い年だって」
そう紹介すると、平打さんは「えっ」 少し焦った表情になり、慌てて名刺を取りを出した。
「初めまして。ハイドランジアの平打と申します」
「ハコベラの長船でーす。そんな畏まらないでくださいよー気楽にいきましょー」
平竹さんの態度のほうが、社会人としては正しいと思うぞ。長船よ。
「平打さんめっちゃ美人! もっと早く紹介してくれればよかったのにー!」
なぜお前に平打さんを紹介せねばならんのだ。
「……志摩さん。今のうちに行きましょう……」
二人の意識が俺からそれたのをいいことに、俺は逃亡を図った。
こんな魔の地帯から、一刻も早く離れなくては……
これ以上の面倒はもういい。
俺が一体何をしたと言うんだ――。
少しムカつきながら二人にはバレないよう、彼女を連れて別の所へ行こうとした。
が、自分が向かおうとしている方向にさば缶があることを思い出し、立ち止まる。
ダメだ。
そっちはそっちで捕まってしまう。
別ルートを行こう……
なんて障害が多いんだ、ここは。
そう思いながら、振り返った。
「――……」
神様。俺は何か、悪いことでもしたのでしょうか。
「……お前、何してんの?」
会いたくない人ばかりになぜ、会わせるのでしょうか。
これは、何かの罰でしょうか。
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