29話
「みなさーん! おはようございまーす!!」
「おはようございまーす!」
「まーす」
「おはようございます……」
「……」
文房具祭、二日目。
曇り。
「あれー? みんな声が小さいなー? もう一回いくよー。おはようございまぁーす!」
「おはようございまーす!」
会場には多くの人が足を運んでいた。
「オイ! 明日見さんしか言ってないじゃねぇか! 学校で習わなかったか!? 挨拶はしっかりと」
「店長、恥ずかしいので早く中に入りましょう」
「何だと、この野郎……」
日曜の朝からこのテンションはきつい。
明日見さんもよく平気でいられるな。
「ねーねーお腹すいたー」
「ちょ、俺の服を引っ張るのはやめなさい! これから散在するっていうのに、奢りませんからね!」
それでもしつこく「ねーねー」と、店長にたかる志貴君。
「ふふふ。楽しみですね!」
「え? でも明日見さんは昨日も来たんですよね?」
「はい! こうやって皆さんと、一緒にイベントに参加できるのが、嬉しくて!」
俺と志摩さんはそれを聞いて「そっかぁ……」と、少し和む。
が、俺はふと気づいた。
「それではレッツゴー! ですー!」
店長ではなく、明日見さんがいつの間にか主導権を握って進み始めた。
「……あれ? 沖さん? どうかしたんですか?」
立ち止まったままの俺を見て、志摩さんが振り返る。
「明日見さんって……」
「明日見さん?」
「学校に友だちとかって、いるんですかね……?」
「……」
なぜ何も言わない。
そこは「いるに決まってるでしょ!」とか言ってくれ。
「い……いると思いますよ……?」
おい、どうして疑問形なんだ。
「いますよね、さすがに」
「そうですよ、私だって友だちいますもん」
「ハハハ……」
何だか触れてはいけない話題に触れてしまったような気がして、俺たちはお互いに笑って誤魔化そうとした。
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