28話

「文房具祭……ですか」

「はい。不本意ですけど、当日は俺と一緒に行動してください」

「不本意って面と向かって言っちゃうんですね」

 さらにまた別の日。

 志摩さんとシフトがかぶったときに、俺は文房具祭のことを話した。

「そっかぁ。もうそんな時期かぁ。楽しみだなぁ……」

「呑気なこと言ってる場合じゃないでしょ。この間とは比べものにならないくらい人の多い所に行くんですよ?」

「だ、大丈夫ですよぅ……人混み恐怖症じゃないんですから……」

 似たようなものだろ。

「土曜日は俺も志摩さんもシフト入っているから、日曜の参加ですね……。くそ。また日曜か」

 何でいつもいつも……

「そんなに嫌なら行かなきゃいいじゃないですか」

「誰のせいだと思っているんだ」

「す、すみません……」

 にらみつけると、逃げるように志摩さんは俺から離れていった。

 たまたま通りがかった店長にそれを目撃され、白い目を向けられる。

「違いますから! いじめてませんよ!」

「フォローするこっちの身にもなれよな……」

「だから違いますって!」

 そう何回も泣かれてたまるか……

「で? 沖君と志摩さんは日曜のほうでいいよね?」

「はい……店長は土曜日ですか?」

「両方」

「……え?」

「両方」

 何を言っているんだ……?

「ちなみに、明日見さんも両日参加希望。志貴はどうすんだろな」

「二日も行って何するんですか……?」

「一日で全て見終えることができると思うか?」

 逆に聞き返された。

「まだまだだな……沖君……」

 まだまだでいいです。

「一日目は目当ての物を買いに行く。余力があれ他のもチェック! 二日目は一日目の見落としを回る!」

「そうですか……」

 この人、基本的に淡々としてて何考えてるのかよくわからなかったけど、文房具のことになるとここまで人が変わるとは……

「店長……早くいつもの店長に戻ってください……」

「は? いつもの店長だけど?」

 いつもの店長じゃないから言ってるんだよ……

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