27話
「皆の衆! 文房具祭じゃあーっ!!」
また別の日。
店長がわけのわからないことを叫びながら、店に顔を出した。
「……はい?」
「うるさいから静かにしな」
皆の衆と言っても、俺と碓氷さんしかいない。
「よりによって、ドライなやつらしかいないとは」
誰がドライだ。
「今年もこの季節がやってきた! 文房具祭!」
「あーはいはい。楽しみだねぇ」
碓氷さんが雑に店長をあしらう。
「店長……キャラ変わってません?」
「キャラ!? 変わる!? ――ああ、そうさ! そのくらいテンションは上がってるね!」
「こいつまた八連勤くらいしてるんじゃないの?」
そんなはずは……あるかもしれない。
「文房具祭……明日見さんも行くって言ってました。店長も行くんですか?」
「当然! そして、君たちも行くんだよ!」
「はい?」
何……だと……?
「チケット取れたらの話だろ。そりゃ私だって行きたいけどさ」
「チケットのことは心配ご無用。任せておきなさい」
えらく自信ありげな店長。
目の下の隈がすごいから、やっぱり俺の知らないところで連勤しているな?
「これは業務命令だ! 全員文房具祭に参加すること! 土曜日休みの者は、土曜日参加でも良し!」
「パワハラですか?」
「パワハラ違う!」
一歩間違えれば、パワハラだろ。
「チケットは全員分用意します。土・日のどちらがいいか早めに希望を出すこと」
「もしかして、会社が用意してくれるんですか?」
「そんなわけないだろ」
違うんかい。
「そこはホラ……コネとかコネとかコネを使って」
「コネじゃないですか」
「大丈夫だから! 俺に任せなって!」
いや……俺は別に行きたくないから、どうでもいいんだけどね?
「いいじゃん。行かせてもらえるんだから。行っとけば。多分あんただけだよ。喜んでないの」
碓氷さん……全くその通りですけど、そんなハッキリ言わないでもらえますか……
せっかく明日見さんを回避したというのに、結局俺は…
「興味ないのはわかってるから、志摩さんのお守りしておいてよ」
「言われなくてもそうします……」
まさか、これが狙いだったのか?
だとしたら俺は、まんまと店長の思惑に……
「最近さ、志摩さん頑張ってるんだよね。沖君に泣かされたせいかな? この間一人で帰るって言い出したときは驚いたよ、本当」
言い方が引っかかるけど、それは大した進歩だ。
「なんか感動しちゃってさー。頑張ってるなぁって。親の気持ちって言うの? ねぇ、碓氷さん」
「結婚して子どもできてから言え」
「ひどくない?」
きつい言い方だったとは思うが、俺の言葉で彼女が前に進めたのなら、それはそれで良しとしよう。
泣かせたと言われるのは、やっぱり引っかかるけどな!
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