25話
「ここに居座るの、やめてもらっていいですか」
俺が出動要請を出してしまったせいで、二時間も早く出勤してきた店長は、事務所のパソコンを占領している新野さんを見て、顔をしかめた。
「おおっ? どうした、秋谷。早いじゃん!」
「誰のせいだと……」
頭を抱える店長。
「来るなら連絡ください。俺に用があるなら、シフトを確認してから突撃訪問してください。そっちでもシフト見られますよね?」
「ふぁーい」
お菓子を食べながら、いい加減な返事をする。
聞いているのか、聞いていないのか……
店長の表情が、怒りを通り越して無の境地に入っている。
怖い……
「早く用件を述べて、早々に立ち去ってください」
「あー……うん。これと言って用はないんだけれど」
……ないの!?
「沖君の様子と、上手くやれているかっていうのを聞きに来ただけー。売上はいつも通り変わってないし、人手も相変わらず足りてなさそうだし、他に言うことないかなぁ」
「……何しに来たんだ……」
店長、心の声が漏れてる、漏れてる。
「あーあ。秋谷来ちゃったのなら、次行くしかないかぁ。そんじゃあねぇ~。上手くやりなよーぅ」
彼女は颯爽と、学園前店を去っていった……。
さっきまでおさまっていた雨が、また降り始める。
今日の天気、どうなっているんだ……?
「沖君……」
不穏な気配を感じ取って、ハッとする。
「す、すみませんでした! こんなことで呼んでしまって!」
土下座する勢いで、俺は頭を下げた。
「君は悪くないから。それより俺は、あの女に腹が立っている……」
顔を上げると、店長の目は怒りに燃えていた。
新野さん……
俺にもよくわからない人だ。
女性だというのに、あのがガサツさ。
朝礼のことで不満を漏らしていたけど、もしかすると部署内でかなり浮いた存在ではないのかと疑ってしまう。
本社にいたときは、全く関わりがなかったので、ああいう人がいることも知らなかった。
しかし、新野さんがあの雑さだからこそ、学園前店は守られている部分もあると、以前店長は言っていた。
それでも……
「あのババア! みんなのおやつにと思って置いておいた菓子、全部食いやがった!」
ガサツで図太い人であることには変わりない……
「ちょっと待って。パソコン開かないんだけど。パスワード変えられた!? 沖君! あのくそババア捕まえてこい!」
……。
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