12話

 工作好きと謳っているだけあり、案外早く作業を終えることができた。

「お疲れ様……。本当に疲れた顔してるな」

 うるさい長船を見送り、俺の顔を見るや否や、店長はぎょっとした。

「疲れました……色んな意味で……」

「だろうね。もうとっくに上がりの時間過ぎてるし、早く帰りな」

 朝イチから出勤しているので、夕方での上がりだ。

 時間がたつのが早い……

「あ。お疲れ様でーす」

 そこへ、学校を終えた志貴君が出勤してきた。

「沖さん、昨日はありがとうございまーす。コレ、うちのかーちゃんから。お礼だって」

 志貴君から受け取った袋を覗くと、お菓子だった。

 何だか高そうな……

「いいの? 大したもの奢ってないのに、こんな」

「いーよいーよ。家にあった物で悪いけど」

 ここに来てから、色んな人が俺に食料を恵んでくれる……!

「飯でも行ったのか」

「そ。沖さんがハンバーガー奢ってくれたんだ。二つも」

「ちょっとは遠慮しろよ……お前……」

 呆れ顔になる店長。

 大丈夫ですよ、ハンバーガーくらい。と、慌ててフォローを入れた。

「……んまぁ、仲良くやってるようで、安心したよ」

「……? どういうことですか?」

「君、わりととっつきにくそうな雰囲気だったからさ。大丈夫かなって」

 そんなふうに思われていたのか。

「ここにいたら、人との間に壁作ってる暇ねぇわな」

 確かに。

 女性陣はみんな気が強いというか何というか。

 こちらの都合など無視してきそうだし。

 志貴君は自由奔放な子だ。

 ……けど、そのほうが返って良かった……のかな?

 これからどうなるのか、わからないけれど。

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