蠍座

 銀河鉄道の夜のテーマともいえる蠍の話は、キリスト教徒である姉のかおるの口から語られます。その昔、バルドラの野原に生きていた蠍は井戸に落ち、多くの生き物を殺して生きていたことを後悔したそうです。この命を他の生命のために使ってほしいという彼の願いが天に聴きいれられ、蠍は天に輝く蠍座になったというお話です。

 この蠍は鳥捕りで体現されている、賢治の理想の生き方そのものを現した存在であり、銀河鉄道の夜のテーマを読者に直接語りかける場所でもあります。

 かおるから蠍の話を聴いたジョバンニはカムパネルラに語ります。

「カムパネルラ、また僕たち二人っきりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなのためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかなわない」

 そうしてその言葉の後に、ジョバンニはカムパネルラと永遠の別れを迎えます。


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