鳥捕り

 鳥捕りは、銀河鉄道の中でも謎に包まれたキャラクターです。菓子になる鳥を捕まえ、その鳥をジョバンニたちに振る舞う彼ですが、彼についての考察はほとんどおこなわれていないといってもいいかもしれません。作中でどこまでも行けるジョバンニの切符を褒めるのも彼であり、ジョバンニにこの人のために何かしてあげたいと憐憫の感情を抱かせる他者でもあります。

 この人物は、一説には帰ってこない漁師であるジョバンニの父親を投影したものであるともいわれています。銀河鉄道の夜フィールド・ノートによると、鳥捕りは食物連鎖という生き物が背負っている業を体現したキャラクターだと言われております。後述する蠍座の話にもあるように、賢治にとって他の生き物を食べる。即ち他のものを傷つける生き方は、それ自体が業の深いものでした。

 それゆえに、賢治は自身の作品で必要な分しか命はとってはいけないことを何度も訴えかけます。名作である夜鷹の星は、まさしくその宿命を描いたものであるともいえるでしょう。

 銀河鉄道の夜フィールド・ノートによると、鳥捕りは必要な分しか鳥を捕まえないために、その業から辛うじて逃れている存在だとされています。彼の鳥が菓子になるのは、その暗示ともいえるのです。食物連鎖の中にあって鳥捕りは必要な分しか生命の命を奪わない、賢治の理想の生き方を体現したキャラクターといえるのです。

 また、ジョバンニの銀河・カムパネルラの著者の椿淳一によると、鳥捕りは白鳥座の隣にある狐座の擬人化だといわれています。鳥捕りは狐座の領域をテリトリーにしており、それゆえに気まぐれに消えるのだそうです。

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