第2話 寮生活その1

「皆さん。讃沙羅寮にようこそ。 部屋は各自用意されております。トイレと風呂は共用です。食事はこちらの食堂で食べられます。」寮長より説明を受けた。


「それではこれから歓迎のレクリエーション大会を行います。音頭をとらせていただきます。18期の代表,石河修也と申します。宜しくお願いします。」


石河の司会進行でレクリエーションが行われた。鉄板のジェスチャーゲームや伝言ゲーム,マルバツゲームなどで盛り上がった。



一通りレクリエーションが終わり,歓迎パーティー兼自由歓談となった。

「お主。若いな。名前は何というんじゃ。」

「俺は,長谷堂翔太。年齢は覚えていない。そこの記憶だけすっぽりと抜け落ちている。」

「そうか。ワシは関義文と申すものじゃ。確か80歳だった。警官を若い時に勤めていた。」

「関さん。もしやあの霊峰小学校殺人未遂事件の捜査で功績を残した。伝説の刑事ですか?」


「何故それを知っている?もしやその学校に居たのか?」

「はい。俺はそれをきっかけにして人々を守りたいと思うようになったんです。でも今の俺はこんな風になっちまった。身体はあるのに今の俺はすでに死んだことになっているんでしょうね。」長谷堂は愚痴っぽくなっていた。自分たちは生きていると思ったのに,人造人間だと言われたショックが今でも残っている。


「ああ。そうかもしれないな。今の自分の存在って一体何なんだろうな。そんなことを考えていても意味がないか。お前は警官だったんだな。身体は再建され,今の俺は顔は老けているが心も体も若い頃を取り戻した気がする。どうか年齢は気にせず俺と友達になってくれんか?敬語はいい。普通にな。」

「そんな偉大なる先輩と友達になれるなんて光栄ですよ。宜しく義文さん。いやフミちゃん。」長谷堂は照れ臭そうに言い直した。

「お前のことはショウちゃんで良いか?ハハッ。」お互いに恥ずかしい思いを感じていた。


料理を食べて,盃をかわした。久しぶりの酒だった。年々老化で飲めるものも少なくなり,食べられる量も少なくなっていた。ピザやチョリソー,フライドチキン,ポテトフライ,シーザーサラダ,スパゲティミートソースなどであった。


「さて,そろそろワシもおなかが一杯だ。酒も飲んだし,風呂はどうするか?」

「2時間後でいいんじゃないっすか。フミちゃん。」

「そうするか。この端末で電話するよ。」サンサーラ社から与えられたスマートフォンを使うことになっている。


「それじゃ2時間後に会おう」二人は別れた。





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