最終話

「…納得いかないんですけど」

「なんで?良いことじゃん」

斎藤にやりたいことが見つかった。

リトルリーグで子供たちに野球を教えること。自分が躓いた経験も踏まえて活かせる事もあるだろうし、子供たちが目標を持って頑張ることになにか手伝えたらと考えて、小学生のリトルリーグのコーチをやる事を自分で決めた。

それはとても良いことだと思う。斎藤の表情も明るくなった。

今日は、その初日。

俺は草野球の練習が終わってそのまま残って見守る。草野球のみんなも子供がこのチームで野球をしている人が居て、その人たちはいつも引き続きコーチをしているらしい。奥さんが弁当を持って子供と一緒におにぎりを頬張る。そんな光景がほのぼのと羨ましい。

俺も次から弁当を持って来よう、そう思っていたら、弁当を携えた管理人さんに声をかけられた。

木津さんも一緒だ。

俺が納得いかないのはこの木津さんだ。

あれから斎藤は妙に木津さんに懐いている。あまり俺に見せない笑顔も木津さんには全開だ。

今も練習前にボールを拭いている斉藤に近づいて一緒にボールを拭き出した。

「…いつの間に仲良くなったんだ…」

「本当に、ねぇ。…ああいう人たらしな所が心配なんだよねぇ」

俺と斉藤の前で恋人だと、宣言したのにも関わらずやはり心配みたいで管理人さんも小さく溜息をついた。

「…それにひっかかったのも僕なんだけどね」

太陽に背を向けて笑う管理人さんは、心も笑顔も太陽のようだ。


太陽のように温かい場所。

みんなが笑顔になれるようなそんな場所でありたい。

ようこそ、メゾン・ド・ソレイユへ。


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ようこそ、メゾン・ド・ソレイユへ 遠谷カナ @spica-kira

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