第18話

きっかけは何だったんだろう。

好きになったきっかけはコーヒーだった。まさか身体の関係を持つなんて、5歳も歳上の自分より背の高い男を愛しいと思うようになるなんて思っても見なかった。

久しぶりに味わう太一さんの身体は、疲れているためか感度も良く、いつもより情熱的だった。いつもは聞けない甘い声に腰を落とす。ゆっくりと回すように動かすと太一さんの気持ち良い所に当たるらしい。執拗に責め立てるとそのまま果ててしまった。

疲れている相手に自分の欲望を吐き出すのは気が引けて、体内から自身を引き抜く。

「…亮、俺は前までのようにのんびりとした空間が良かったんだ…」

俺もあの空気が好きだったよ。

小さく頬に口付ける。

「亮の為にコーヒーを淹れる、あの時間が好きだった」

俺も太一さんの淹れてくれるコーヒーが好きだよ、そしたらいつの間にか太一さんのことも好きになってた。

頬から唇へと口付けを落とす。

「毎朝、俺のためにコーヒー淹れて。俺は太一さんの為に料理を作るから」

これは俺の精一杯のプロポーズ。

太一さんは安心したように眠りについた。


それから、週に一度、喫茶店に定休日が出来た。俺が休みの火曜日に合わせてくれて。

その日は朝から美味いコーヒーを淹れてくれる。

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