第17話

「いらっしゃい」

っと、今日もいっぱいか…

忙しなく動く朋樹さんがコーヒーを運びながら声を掛けてくれた。太一さんに手招きされる。

「悪い、ちょっと手伝ってくれ」

メゾン・ド・ソレイユの一階にある喫茶店と言う名の喫茶店に通いだして半年ほど。最近は口コミが口コミを呼んで平日の昼間でも混んでいる。朋樹さんはもちろん、仕事の休みの日には俺も手伝ったりもする。

まあ、閑古鳥が鳴いているよりは良いか

…本当に良いのだろうか。太一さんの顔には、疲労の色が浮かんでいた。


「…疲れた」

深く溜息をついてテーブル席に腰掛け、天を仰ぐように身体の弛緩させている太一さんに俺が淹れたコーヒーを差し出す。俺が淹れたコーヒーはまだ太一さんが淹れたコーヒーには遠く及ばない。それでも美味そうに飲んでくれた。

「今日はもう閉めたら」

漸く落ち着いたのは夕方だった。西日が眩しく差し込んでくる。今から夜の仕込みをしていたら、この人は倒れそうだ。

残っていた洗い物や片付けを終えてクローズの札を掲げる。鍵を締めてそのまま二人で太一さんの部屋へと向かう。

部屋の扉を閉めるとそのまま太一さんがキスを求めて来た。

「…疲れてるんじゃないの」

「疲れてるからこそ亮が欲しい」

そんなことを言われて我慢出来る男がいるだろうか。俺の股間を弄る相手の指の動きにすでに自身は硬くなり始めている。膝をついてジーンズを降ろして咥える太一さんを見下ろす。こちらを見上げる太一さんが艶めかしく征服したい気持ちが煽られる。

「…めちゃくちゃにしていいの」

火照った太一さんの瞳の奥に、期待の籠った色が滲んだ。

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