第13話

生姜焼きが美味かったかどうかはわからない。ただあの日から一緒に夕飯を食べるようになった。学校でも出来るだけ一緒に過ごすようにする。最初は戸惑っていた斉藤も元々の性格は人懐っこいらしい。徐々にみんなと、大場とも打ち解けて行った。

ついでに一緒にバイトも始めた。駅前の居酒屋のバイトだ。最初は俺が始めて、人手が足りないから斉藤を誘った。お互いに慣れない初めてのバイトだったが、斉藤が居るから頑張れるような気がした。斉藤もそうだったら嬉しい。相変わらず表情は固いが、時折笑顔を見せるようになった斉藤が可愛く見える。

四六時中、一緒に居るから部屋の家賃が勿体無いような気がして、管理人さんに相談し、ルームシェアをすることになった。快く快諾してくれた管理人さんには感謝している。

斉藤の部屋は物が少なかったので俺の部屋へと移ってきた。斉藤の部屋にいる時間より俺の部屋にいる時間の方が長かったから、斉藤が部屋にいることに違和感がない。むしろ居てくれないと不安になるくらいだ。


「…っ、ん」

苦しそうな寝息が聞こえた。額に汗をかいている。近くに置いたタオルで汗を拭いて、冷蔵庫から水の入ったペットボトルを持ってくる。

斉藤は上半身を起こして、起きていた。

「大丈夫か…?」

小さく頷く相手にペットボトルを差し出す。それを一口飲んだ。

あれから1年程たって2年へと進級して、周りの環境も少し変わった。けれどまだ、あの時の夢を見るらしい。ベッドへと腰掛けると震える腕が伸びてきて、パジャマ代わりにしているTシャツを掴まれた。

「…起きたら、安達がいなかったから…」

どうやら俺がいないと不安になるくらいには俺に依存しているらしい。よしよしと頭を撫でてやる。一頻り、俺に抱きついて満足したのか顔をあげた。そのまま顔が近づきキスをする。二度目のキスも少し涙の味がした。

「嫌な事、全部忘れさせて欲しい…」

「安達の手で全部塗り替えて」

良いのか、…初めてだから加減がわからなくて酷くするかも知れない。そうしたら、アイツらと同じなんじゃないか

「良いんだ、…好きな人だから」

我慢しきれず思わず斉藤を抱きしめた。

小さな啄むような口付けを落とす。息をするように開かれた唇に吸い付くように自分の唇を重ねる。逃げるような動きをする舌を捕まえて軽く吸い上げる。徐々に熱を帯びてくる自分自身に斉藤の嫌な事はしないと誓う。

服を脱がして全身に口付けをした時に、まだ残る傷跡に気付いた。もう消えないかも知れない傷跡を、斉藤の心の傷跡を、少しでも癒せるようにその上に口付けて紅い跡を付ける。

ぴくんと斉藤が反応した。ゆっくりと恐る恐る手を伸ばす。もうすでに硬い。軽く扱き始めるとすぐに達してしまった。それを舐めあげる、声をあげまいとする様子が可愛らしい。

「怖い?」

ふるふると首を横に振る。気持ちいい、と小さな声が聞こえた。先程の水を掌に取り、それをローション代わりにする。ないよりはましだろうと菊門を探る。指を挿し入れ、柔らかくなるように解していくと斎藤は身体を捩った。

「早く、」

こちらへと向ける顔は紅く高揚して瞳も潤んでいる。それが堪らなく可愛い。我慢出来ずに俺自身を斉藤の中に突き立てた。ぬるぬると体内の中が収縮するたびに俺自身に絡まり吸い付いていく。初めての快感に味わう暇なんてなく腰を動かす。

斉藤の手が斉藤自身を扱いている。その月明かりに照らされる姿が妖淫で艶かしく斉藤に溺れていく。


安心したように隣で眠る斉藤の髪を掻き上げる。斉藤が幸せになれるように全力を尽くそうと、そっと誓うようにキスをした。

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