第11話

校内で見かける斉藤はいつも一人だった。

陰気で人と目を合わせようとしない斉藤と去年の、あの自信に満ち溢れた斉藤と重ならない。誰もあの斉藤彰と今の斉藤彰が同一人物だなんて思ってないだろう。

俺はいつの間にか、斉藤が校内でどう過ごしているのか目で追うようになってしまった。


学食から出ると、斉藤が誰かと連れ立って歩いているのが見えた。

…あれは、この間の奴とは違う

なら大丈夫かと少し安心して友人達の輪に混ざろうとした時、斉藤と目が合った。

縋り付くような不安そうな瞳、その瞳が助けを求めているようで、思わず追いかけようかと身を乗り出す。と、その腕を引っ張られて止められた。振り返ると大学で仲良くなった大場が首を横に振る。

「アイツらには構わないほうが良い」

斉藤と同じこと言うんだな。一体何があったんだ。何か事情を知っているらしい大場を連れてみんなの輪から少し離れた。

「優学館で一体何があった」

あの自信に満ち溢れた斉藤はどうしてああなったのか、夏から春にかけて何があったのか、大場も優学館出身らしい。

「…野球部は、去年夏の甲子園に行けなかった。エースの斉藤が終盤崩れて、でも、決勝だから、エースだからって理由で監督は代えなかったらしい。…優学館は甲子園へ行くのが当たり前の学校だったから、何年ぶりかでその出場を逃した。負けた直後はだいぶ荒れていた野球部だったけど、だんだんと収まって行った」

そこまで言葉を選ぶようにぽつりぽつりと話していた大場は、大きく息を吸い込んだ。

「責任を取らされて斉藤が野球部で輪姦されてるって話で…」

そこまで聞いて俺は斉藤達を追いかけた。

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