第5話 才能の使い道
昨日の事は夢でした――そんなオチはどこにもない。初花さんの軽蔑する視線がすべてを証明していた。
結局、いつもの日常に戻っただけ。
そう思えば、初花さんの視線も気にはならなかった。
「どうした暗い顔して」
友人の古橋啓太が、僕の机の横に立っていた。
「別に」
「何だよ悩み事だったら隠すなよ」
「別に悩み事って訳じゃないけど」
「だったら、なおさら教えろよ」
「ここじゃ何だから後でな」
「わかった、じゃあ今日、帰り一緒に帰ろうぜ」
そう言うと、啓太は自分の教室に帰っていった。
古橋啓太は、一年の時のクラスメイトだ。入学当時、席の隣が啓太で、180センチ以上で筋肉質な体格は、黙っていても周りに威圧感を与えていて、更に大きな声で乱暴な言葉遣いが周りから人を遠ざけていた。
道で会えば、間違いなく目を合わせないタイプの啓太とは、休み時間に見ていたゲーム雑誌をきっかけに話すようになり、お互い好きなゲームが同じで、その話題で一気に仲良くなっていった。
しかし、二人とも積極的に友達を増やそうとせず、一年経っても、仲間の輪がそれ以上広がることはなかった。
だから、啓太が高校で唯一、気軽に話せる友人だった。
僕は帰り道、啓太に昨日のことを告げた。
「それで誤解されたんだ。バカだな」
と大声で笑う啓太は、
「でも、オーラの正体がわかったってのはすごいな。よりにもよって、性欲だなんて。そんなことだったら、もっと早く調べるべきだったな」
と残念がっていた。
啓太には、以前からオーラのことを話していたのだ。
「性欲と決まったわけじゃないよ」
「でも、それが本当ならすごくねえ」
「なんで、何の役にも立たないじゃん」
「お前バカか?」
「え?」
「男にとって、彼女と初エッチするタイミングを見切るのは、永遠のテーマなんだぞ。お前には、それが手に取るようにわかるんだ。すげーよ」
「そんなもんなの?」
「そのタイミングを知るためなら、金を払ってもいい奴だっているかもしれないぞ」
「マジで」
「当然だよ。早けりゃ嫌われるし、遅けりゃ愛想をつかされる。判るだろ?」
「へー」
「これだから童貞は――」
「お前だってそうだろ!」
その後、啓太はどうやって金儲けに繋げるか、道すがら色々と考えていた。
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