プロローグ 郵便を。

手紙が遠くへ、遠くへ空を走り抜けて

いく。

これで無事に着くだろう。

いつもだったら、これで仕事ゆうびんは終わりなのだが…

俺は、隣にいる彼女の横顔を見た。

晴々とした顏をしているが、悲しそうで、寂しそうな顔をしていた。

その横顔を見て俺は、思う。

笑っている顔が見たい。

-傍で見ていたい-

俺は、彼女をずっと見ていた。

「あぁ、こんな姿見せてごめんなさい。ありがとうございました。では。」

「あの…!待って頂けませんか?」

「?」

伝えられない想いは沢山ある。

「あの…」

そんなの分かってる。

「あっ、料金ですか?」

何も、それを伝えるのが仕事だから。

「いや、違って…」

この力を使ったほうが楽だろう。

「あれ?違います?何かし忘れてました?」

でも、

「あの…」

時には、

「?」

その力を使わずに、

「えっと…」

伝えたい。

「俺と、友達になって下さい!」

「…」

彼女は黙った。

「だ、ダメですか…?」

「…ふふっ」

そして、小さく笑った。

「何故、笑って…」

「だって、そんな簡単な事だったんだなーと。」

「え、」

「それに、敬語が軽くなるぐらいぐらい緊張されてたんだな、って考えると、面白くて。」

「はっ…!」

確かに…取れてしまっている。

「敬語なくていいよ。同年代でしょう?名前は?」

「龍星…だ。龍の星。そっちは?」

風月ふづき。風の月よ。」

風の月か。

月と星。それは支え合ってるものだと俺は思う。

そう、なれたらいい。

そんな思いを込めて手を差し出した。

「よろしく。」

すると彼女ふづきは力強く握り返して

「こちらこそ。」

と言った。

「、っ」

息を呑むほど、綺麗な笑顔、だった。

その日の空には、流星が瞬いていた。

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