第16話 種子


揺らいだ夢とてここにはあれど。



何となく言葉が浮かんだものを書き留めただけのノートを持っている。意味は特になかったりもする。いずれそのように書き出された言葉達が、私の作る曲の歌詞の中に織り交ぜられていく。


昨日は久しぶりに、歌詞とメロディーが脳内に突然出現した。その時私はお風呂の中にいたため、慌てて飛び出してスマートフォンを起動して録音するほどには嬉しかった。


学生時代にはいくつもの案が日常の中に浮かんでいたのに、今はなかなか生み出されない。ここ数年はそうやって1人で焦りを感じていたから、昨日の出来事は本当に安心した。


そしてまた私は数年後の自分に向けて、言葉の種を残していく。言葉の種をノートに書き留めて、未来の私がその中から歌を紡げるように。私が作る歌が、誰かに届くように。過去から未来へ、言葉の種をひたすら、ゆっくりでもいい。少しでもいい。書き残していく。


私がどうか、未来でも、私自身の歌を紡いでいけるように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る