第8話 戯言
誰が為に絶望に染る?
この時間帯眠れていないと私はよく真っ黒な世界に堕ちていく感覚がする。
だから早く眠りたいのだが、そうもいかない。
君の為に使った時間は戻ってこない。
もう約3ヶ月も経つのか、とひとりごちる。未だに忘れられていない人がいる。次に進もうと幾度自分自身を奮い立たせていても、夜だけは記憶がとぐろを巻く。私を喰らおうと大口を開けている。元はと言えば私も悪いのだと、人に言われた言葉が脳に染み付いて離れないんだ。
ならば、誰が為に己を費やす?
悪夢が増えている。愛しい人が離れていく恐怖はまだ拭いされていない。私が進む方向は明らかに間違っている。今を止めようとするまだ無垢だった過去の私と、進もうとする、もう既に心が血色に染まった現在の私がいる。もしこの苦しさを言葉として説明しようとしても、私は呻き声しか上げられない。助けてという言葉なんてとっくに辞書からは捨てた筈なんだ。
誰が為に歌を奏でる?
喉を枯らして叫んだ。枯れた声でも歌を、音を紡ぐ。人と繋がる為の歌を。
私の生きる意味を、私が私である意味を何度もなぞらなければ。
何度壊れたのかすら、原型すらもうよくわからない心のガラスを掻き集めて、無理やりにでも修復して、新たな作品にする。
このこえが
このうたが
くるしみをかてに
きぼうのうたを
つむぐように
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