第2話 化粧
風呂上がりに自分の顔を鏡で見た。落ちきれていないアイシャドウのラメを指先で擦る。しかし目元にくっきりと深緑のアイシャドウはこびり付く。
[毎度面倒臭がってクレンジングを使っていないのが丸わかりじゃねぇか。] そう、一人心のうちでボヤきながら擦り続ける。
深緑と、その中にキラキラと光るアイシャドウ。まるで、森の奥から空を見上げようとしてきた時の木漏れ日みたいで。彼の色だ、と一目惚れした色。
記憶を辿ると同時に、どこかで深紅を見つけてこなければとひとりごちた。
愛しいひとたちの声を思い出しながら、私は自分の人差し指に移ったラメを親指の腹で辿る。空いた手でタオルを使い、くしゃりと濡れた髪を拭いた。
これから聞けるだろう彼らの声を思い浮かべて。
私はきっとこれからも日々、愛しい色を身に染み込ませる。
……今朝もまた私は、深緑と深紅のアイシャドウを目元に滑らせて家を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます