独白
ハリト
第1話 傷痕
既に体には幾つも傷がある。
それだけではなく、これからもさらに傷は、痣は増える。
人からの暴力ではない。
自分の手によって。
或いは、生きる為に必要だった段階によって。
大半は、無意識に肌に傷をつけ血を流す自分の爪によって。
止められもしないとわかりきっているから、いくら人に言われても笑うしかできない。
何故そんなに叱られるんだ。無意識に、常習的に行われるこれをどうやって止めろと?
私だって美しくいたかった。
けれど、美しく痛かった。
自分の痣だらけの体を疎む訳では無い。過去を踏みしめて歩いた痕跡のひとつだから。
だとしても、そうだとしても、愛おしい人の為には美しく在りたかった。
真っ白で、全く傷一つない肌を差し出したかった。決して叶わないと分かっていても、それだけは幾度となく脳内を走り回る。
私の全てを愛してくれるだろう人には、生まれつきであれ生きるためであれ、……。
勝手に答えを導き出す脳を留め、泣きかけた目を拭った。
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