第7話

白羽と灰羽が眠っている時の話。


紅羽はひとり、巣から外に出て空を見上げながら考え事をする。

大抵はふたりのことを。




白羽は悪夢を見ていないだろうかだとか、灰羽は寂しくないだろうかだとか。




しかし、一通り彼等のことを考え終えてしまうと次は己の感情に目を向けてしまう。




さみしい、かなしい、くるしい、その他様々な感情に呑まれかける。




じくり、未だに治らない傷口から血は滲む。

胸元から次第に血が溢れ始める。



「くろねこ、」



独りごちながら瞼を閉じると背後に大きな羽根が広がる。


漆黒の、自らを全て覆ってしまうほどの羽根が。





[俺を呼んだか?]


「呼んでいない。なぜ出てきた、黒羽よ」


[おいおい、そう睨むなよ。お前からヤバい雰囲気が伝わったんだ。]



静かに笑いながらこちらを見つめる己の分身を、紅羽は面倒だと言いたげに睨む。


しかし黒羽は何事もないかのように紅羽に擦り寄り、その黒い翼で紅羽を包む。


紅羽は反射的にその翼を払いのけようとしたが力の差で黒羽に包まれ、そのまま強制的に眠りに落とされていく。



「待て、私はま……だ……」


[眠れ。今はな。]


「…くろ………、……」


[……ったく、世話の焼けるやつだ]



紅羽が眠ったことを確認し、黒羽はまた紅羽の影の中に、ひとり帰っていった。

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