第5話


灰羽が生まれた日。紅羽の証言。






ある夜突然、灰色の蝙蝠が巣の奥で生まれた。そして目を覚ました。

白羽にそっくりで、しかし身体が少しだけ大きくて。




そして灰色の蝙蝠は背後から私に抱きついて、直後、私の首筋に牙を立ててきた。




私?もちろん、為す術もなく組み伏せられたよ。

感覚からして白羽と思ったんだ、はじめは。だってよく似ているんだもの。




でも少しして、誰だか分からなくなったんだ。



どうやら声が違うんだ、そしてその仕草も。



「……シロハ?シロハだよな…?」


混乱しながら手探りでそっと抱きしめて、


[ちがう、誰だこれは]


とその瞬間脳内で私は悲鳴をあげていた。



『大丈夫だよ、アカバネ』



しかし、その声に溺れていった。

彼の下で、散々甘やかされながらシロハの名前を呼んでいた記憶だけが残っている。




後に戻ってきた白羽に擦り寄られながら、私は理解出来ずしばらく虚空を見つめていた。




ハイバネという名を知り、わたしにとって愛しむべき者が増えたことを悟ったのはあとの話。


この時はまだ、きっと混乱していたんだろうね。私。

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