第108話 使徒様は休まらない
リエティの教会まで2時間程度。
馬車の音が聞こえたのだろうか。
イザベルが教会から飛び出してきた。
「大丈夫ですか使徒様!」
夜中というのに大声を出すな。
「無事だ。何があったかは中で話す」
この国では伝説の暗殺者とかテロリストとして恐れられているからだ。
ただ滅多に出てこないので普通は伝説とか作り話のような扱い。
言う事を聞かない子供に『
そんなのが実際に出たなんて話が広まったら不安が広がってしまう。
「使徒様よくご無事で。それでこの馬車は?」
この教会の責任者タバルコ司祭も出てきた。
更に御者をやって貰っていた教会本部所属のロベルト司祭補まで。
「詳細は中で話そう。色々あるから」
とりあえず馬車を外して馬を厩舎へ繋ぐ。
この教会の副責任者であるマドラサ司祭も含め、5人で教会奥の小部屋へ。
「しかし何故イザベル司教補を戻されたのですか。相手が高位の術師でもイザベル司教補なら遅れをとることは無いと思いますが」
イザベルは首を横に振る。
「いえ、私ではとても勝ち目は無かったのです。何者だったのですかあの存在は」
「
沈黙が広がる。
「まさか
「ああ。私も今までそんな存在が実在しているなんて思わなかった」
一方でイザベルはうんうん頷いている。
「それならわかるのですよ。洒落にならない暗い巨大な力を感じたのです」
そしてふと何かに気づいたようにびくっとして、そして俺の方を見る。
「まさか使徒様、
「いや、残念ながら力及ばすというところだ」
あの後の状況について話す。
途中使徒トマゾが出たあたりでイザベルが『うえーっ』って顔をした。
さては知っているなこいつ。
だから一通り話した後、イザベルに聞いてみる。
「ところでイザベル、
「知っているも何も一部の間では有名人なのですよ。王宮内や
何だそりゃ!
「でも会った時は普通に紳士だったぞ」
「使徒様が細身だったのが奴の好みにあわなかっただけなのです。奴は男女とも肉付きがいい体つきを好むのです。
おい待て何だその見境無い狼藉者は。
「失礼だがそのような話は私ははじめて伺いますが」
「
そう言えば何か怪しい視線で上から下まで見られたような感じがしたな。
あれは俺の気のせいではなかったのか。
恐ろしや
「でも実力は確かだったな。何せやや優勢だった筈の
「実力が確かでなければ真っ先に使徒の地位から引きずり落とされて島流しなのですよ。なまじ実力があって役にも立っていて上辺の態度もそれらしいだけに始末に負えないのです」
何だかなあ。
どっと疲れた。
ただでさえ疲れているのに余計に疲れた。
「以上だ。報告は明日、ラテラノの本部で書くよ。今日は疲れたからもう眠りたい」
そんな訳で夕食も食べずに眠ることにする。
◇◇◇
翌朝は教団の馬車の後で奴の馬車を操りアネイアまで5時間。
衛視庁で半日事情聴取を受けた後、教団の馬車でラテラノへ。
そんな訳でもうぐったり状態だ。
だが予定日より到着が1日遅れたという事はだ。
学校関係のお仕事を大急ぎでやらないと3学期開始に間に合わない訳で……
「入学試験の出願書についてはこちらです。こちらが来年度関係、こちらが今学期関係の書類です」
かつてのソーフィア大司教並みに書類を積み重ねられた上での作業になる。
入学試験の出願書には校長である俺の自筆サインが必要。
校内の書類のように代理決裁という訳にはいかない。
入試以外の進路にも全て目を通しておく必要がある。
更に来年度に向けての募集は既に始まっている。
消耗品の決裁等は基本的にノーラ司祭が代理決裁しておいてくれた。
それでも一応目を通さないと。
体力は施術で回復できるが精神的な疲れでもうボロボロ。
一応
でも出来る限り使用は避けたい。
あれをやると禁断症状でラリったりバッドトリップしたりするらしいから。
そんな訳で自己回復施術をかけつつ、俺は書類処理を……
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