第103話 安息日の試験対策勉強会

 最近は安息日にも自由勉強時間を設けている。

 希望者が勝手に勉強をやって、わからない処を質問してくる訳だ。

 場合によっては解法の解説授業なんてのもやったりする。

 なお休憩時間には俺かイザベル作成のおやつ付き。

 ちなみに談話室でのゲームやだべり用の集まりも継続している。

 俺とイザベル交代で両方の部屋を見ている状態だ。


 その勉強部屋の方で休憩時間にアウロラとちょっと話してみた。

「そういえばアウロラ、グレタに聞いたぞ、圧力鍋を作った話」

「あれはなかなか面白い物になりました。何かグレタちゃんには儲けの一部まで貰って申し訳なかったですけれど」

「あんなの何処で思いついたんだ?」

 どうせ南部の某教団幹部あたりが出所だろうと思ったのだけれども。


「あれは校長先生の話を聞いてですね。前に『水が沸騰する温度って、何処でも同じ温度なのか』を聞いた時です。『山の上だともっと低い温度で沸騰する。それは空気の圧力に関係しているんだ。山の上とこの辺を比べると、山の上の方が上からかかっている空気の重さが少ない分、空気の力、圧力が低い。逆に山の上とこことを比べるとここの方が空気の圧力が高い。空気の圧力が高いところほど高い温度で沸騰するようになるんだ』って教えてくれましたよね」

 俺が原因だった訳か。

 でも本当に教えただろうか……

 何せその場その場で色々答えているから記憶にあまり残っていない。


「それで人工的に空気の圧力を高くすると本当に高い温度で沸騰するのか。それが気になってグレタちゃんに実験装置を作って貰ったんです。それがまあ、あの鍋の原型ですけれど」

 なるほど。

「実験したら確かに沸騰する温度が高かったんです。ただ私は現状認識でわかるけれどグレタちゃんにはわからないので、試しに中にお芋を入れて見たんです。そうしたらちょっとの時間なのに中まで柔らかくなっていて。それでグレタちゃんが本格的に鍋として作って、でも普段料理しないから2人とも本当に役に立つのかわからなくって、結果調理のおばさんに試してもらったんです」

 なるほど。

 そんな流れだった訳か。


「あの実験装置面白いよね。見せて貰ったけれど中の圧力が10倍だと本当なかなか沸騰しなくて」

 おいおいそんな圧力をかけたのか。

「鍋の方はそこまで高圧にはしてなかったけれどな」

「使用する上であまり力がかかると危ないので2培くらいの強さまでにしたんです。更に安全の為蒸気を逃がす場所を2箇所にして。

 でも実験用はグレタちゃんに鉄塊を削って作って貰ったから力が10倍でも多分大丈夫です」

 そんな恐ろしい仕様も作っていたのか。

 まあグレタの技術は確かだしアウロラも限定的ながら現状認識を使えるからな。

 そう心配はいらないのだろうけれど。


「でもあの実験用の方で中の空気を薄くするのも面白かったよね。蒸気を出しまくった後一気に冷やして。そうすると普通より確かに低い温度で沸騰するのがわかるの。あれで色々な性質を実験するのが面白いなと思って。

 それで中等学校でもっともっと色々な事を勉強したいと余計思うようになって」

「ああやって実際に実験すると面白いよね。イザベル先生の鉄と硫黄から全く別の物質が出来るという実験も面白かったし」

「でも中等学校でもここと同じくらい面白い事が色々出来るかな。その辺がちょっと不安だったりします。ここの校長先生と副校長先生がある意味特別な人なのは確かですし」

 うーん、俺は前世の知識持ちだしイザベルはある意味この世界における知識チートだしな。

 確かに特別といえば特別かもしれないけれどな。


「でももし中等学校にそういう先生がいなかったら、自分がそういう面白い事が出来るようなるしかないのですよ」

 いつの間にか部屋に来ていたイザベルがそんな事を言う。

「その為にはやはり色々な知識を学ぶ必要があるのです。ここよりもっと色々学べる処に行って。

 それに少なくとも王立学校はそれなりにいい先生が色々揃っているのです。何人かは校長先生も真っ青な位の変人ですが、それでもその分野に関しては超一流の知識を持っていたりするのです。

 だから勉強する場として不足は無いのですよ。それでもわからない質問があったらまた安息日にでもここに来て質問してくれればいいのです。何やかんや言って校長先生は甘いから何でも質問には答えてくれる筈なのです」

「副校長先生も、だろ」

 その辺はイザベルもかわらない。


「なら安息日に行き来出来るアネイアの王立学校に受からないとね」

「よりにもよって最難関ですけれど」

 なんて言っていると他からこんな声も聞こえてくる。

「俺は実家に近いネーブルの王立学校希望なんだけれどさ。それで校長先生に質問がある時はどうすればいいんだ?」

「その時は手紙でも書いてくれよ。校長宛でも使徒宛でも着くからさ」

「ちゃんと私も見て返事を書くから問題無いのです」

 おいおい。

 でもまあ生徒宛てならいいけれどさ。


「さて、おやつもそろそろ食べ終わったので勉強再開なのですよ。例によって質問があればいつでも申し出るのです」

 そんな感じで勉強会が再開する。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る