第16章 リアル版シムシティ
第82話 そして今度は街づくり?
グレタちゃんは治療の施術をまだ使えない。
でも熱の施術に関してだけは初級中級通り越した状態だ。
ただその熱の施術は金属加工に特化している。
その辺は本人の興味や志向の反映だろう。
出来上がった鍋はなかなか楽しい感じだ。
白地に小さな花が色々咲いている感じの絵が鍋の横に入っている。
仕上がりもなかなかいい。
「OK。これで完成だな。よく出来ている」
はじめてだけれど文句無い出来だ。
最後は親方自ら挑戦。
以前は施術が苦手と言っていたのだが、今見てみるととてもそうとは思えない。
仕上がりは外側がオレンジに近い赤、内側が白。
この組み合わせはまさに定番だよな。
俺は定番過ぎてあえて避けたのだけれども。
まあこの世界には関係無いか。
「これで鍋の方の実習は終わりだな。あとは後日、製陶工場で自分の作ったものを受け取ってくれ。今回は新製品の製作実験を兼ねているから代金とかはいらない。いつもとちょっと違う面白いものが出来たな、そう思ってくれれば嬉しい」
そう、これで楽しい新製品作りはめでたく終了だった筈だった。
その裏でスコラダ大司教の意向が働いているなんて思わなかったんだ。
ましてや国王なんていると思わなかったんだ。
本当に。
◇◇◇
生徒と一部職人対象の新製品製作実習会から3ヶ月後の春。
高級製陶工場も用地を確保してまもなく建設を開始する予定だ。
ここでは磁器だけではなくあのホーロー鍋も作る。
なお鍋の本体は従来の鍛冶場で作ってホーローがけをこの新工場で作る予定。
また鍛冶場も鉄工所といっていい位に規模が大きくなった。
以前は教団の使う金属製品色々を補修するだけの場所だった。
それが今では新型馬車の部品だのホーロー鍋の元だの色々製造する拠点になってしまっている。
そんな訳で次の最高幹部会議の話題はこうなる訳だ。
「今のままでは絶対教団だけの人員では足りなくなりますね」
俺がこの世界に来た頃には人が余っていた位だったのに。
何せ製陶工場だけでは無い。
色鉛筆工場なんてものがまもなく稼働。
更に食品工場もインスタント製品だのソースだので鋭意生産能力増強中だ。
鍛冶場も大きくなった分、人が必要。
つまりどう考えても人手が足りない。
専従員と生徒だけでは間に合わないのだ。
「教団内だけではなく一般からも従業員を募集するしかないでしょう。ある程度採算がとれるようになったら教団から独立させるつもりで運営計画をたてておきます」
ソーフィア大司教の台詞にスコラダ大司教は首を傾げる。
「人が集まるだろうか」
「ある程度生活環境と手当を考慮してやれば大丈夫でしょう。住民が集まればリアーナ等から商店の出店を求める予定です。そうすれば一般の方も生活に困る事は無いでしょう。それまでは売店を作って教団で調達している食糧や衣服等の日常用品をある程度購入出来るようにしておきます。費用は多少かかりますが教団の人員や学校の生徒の労働力もある程度あてにしている以上仕方ありません。
製陶部門だけでなく他の作業場でも徐々に人手不足が深刻になりつつあります。ですが教団の非宗教的部門の規模をあまり拡大するのも望ましくないでしょう」
まあその通りだ。
「募集は近隣の各教会の他、教会のある街の公共掲示板や
「でもそうなるとラテラノに私企業と宗教外住民の街が出来る事になる。ここは宗教区域として教団による土地の一括所有と自治が認められているが、その辺の原則が崩れる」
これもスコラダ大司教。
なるほど、そんな事もあるわけだ。
ラテラノでは教団が勝手に開墾したり建物を建てたりしているけれど、その辺はそういった法律的な位置づけがあった訳か。
「その辺の国王庁との折衝はスコラダ大司教にお任せしたいと思います」
ソーフィア大司教、あっさり投げた。
国王からの依頼を受けたのは
スコラダ大司教、苦い顔で頷く。
「わかった。早急に話し合いにいくとしよう」
「最初は製陶工場で50人程度の募集になりますが、他の工場の人手不足も鑑みると全部で最低200人規模の募集は必要でしょう。その辺は実業部門で必要人員を早急に計算して事務部門に提出して下さい。こちらで審査した後募集をかけますので。実質的なフル稼働は夏以降になるかと思います」
つまり学校だけでは無く一般人の勤務員だけで200人規模の街が出来る訳か。
家族だのを考えたら実際はもっと人数が来るだろう。
確かにこれは行政側とも色々調整が必要な案件だろうと思う。
まあスコラダ大司教は怪しい人脈が色々ある模様。
だから問題は無いと思うけれど。
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