第81話 今度はル・ク●ーゼかス●ウブか
おいおい。
鍛冶場は熊の親分だけでなくほぼ全員が揃っていた。
そこまでは頼んでいないけれどなと思いつつ俺は挨拶する。
「こんにちは。今日はよろしくお願いします」
「任せとけ、とは施術があまり得意で無いから言えないけれどよ。でも言われた通りの準備はしておいたぜ」
小型というか一般家庭用サイズのちょい分厚めの鋳物鍋が3つほど並んでいる。
他にも液体2種類とお湯のバケツ2つ。
事前に用意した怪しいドロドロ。
よしよしいい感じだな。
「それにしても何故ここは全員出勤なんですか」
「鉄関係で新しい技術やるって言うんじゃ全員が見なきゃならねんだろ」
おいおい。
まあいいけれどさ。
「それじゃ今度は鍋でさっき皿でやった事の応用をやってみる。ただ時間がないので事前に親方に色々用意して貰った。
このバケツは
① こっちが貝殻や動物の骨を高温で熱した後粉々にして、水を加えた物
② これは酢を蒸留した後、水で薄めた物
③ このバケツ2つは水だ。施術でお湯にして使うけれどさ
④ この粉はさっき作った皿の原料のひとつ、石を粉にした物を水にといたもの
他に少しだけ粘土とかも入っているけれどな
⑤ これも同じ石を粉にして水で溶いたもの
こっちは粘土が入っていないサラサラな奴だ
⑥ そしてもう一つ材料が必要だ。
皆が今朝河原で拾ってきた石のうち、1個を残してこの中に入れてくれ」
そんな訳で皆から石を集めてバケツに入れ、水を入れた後施術で粉々にする。
なお1個残したのは各自が今後拾ってくる際に参考になるようにだ。
「さて、それじゃやっていくぞ。最初私がやるから見ていてくれ」
用意してある鋳物鍋の1つをトングで掴む。
バケツ①に入れて汚れを落として③のお湯バケツにいれて洗浄。
更にバケツ②に入れた後③のお湯バケツのもう一つに入れて洗浄。
「今の工程でこの鍋についた見えない汚れを取るわけだ。汚れがあるとこの後やったものが剥がれてくる事があるからさ」
さて、次の工程だ。
今度は④の液体に鍋をつけてまんべんなく材料を行き渡らせる。
行き渡ったら熱で乾燥させ、粉が出ない部分はまた液体をかけて乾かす。
「これでここの中に入っている粉をまんべんなくこの鍋に付ける。本当は粉のままの方が楽なんだがこの粉を吸い込むと健康に良くなかったりするからさ。だからつけて施術で乾かすのを繰り返してまんべんなくつけてやる」
全体を白い粉がまんべんなく覆ったら次の作業。
見ると……うん、俺の頼んだ通りのものがある。
一見ピザ釜っぽく見える耐熱煉瓦で作った小さな釜だ。
まんべんなく粉をつけた鍋をこの中に入れる。ここからはお馴染み熱の施術だ。
「この作業の為に親方に専用の釜を作って貰った。粉をつけた鍋をこの中に入れて、施術で熱をかけてやる。最初はゆっくりと熱を上げてやるのがポイントかな」
現状認識を併用しながら釜の中の温度を上げていく。
だいたい800度強になったな。
「だいたいこの温度になったら鼻歌を3曲歌うくらいの時間このまま維持。実際はこの中にいくつも鍋を入れてやるけれどな、今回は見本だから1個だけで」
大体5分くらいで綺麗に溶けて表面にガラス質が付着した。
「これをゆっくりと冷ましてやる。急に冷やすと表面が割れたりするからな」
これでホーローの下地部分は完成だ。
頃合いを見て取り出すと白い鍋が現れる。
「あ、鍋が綺麗になっている」
「そう。鍋の外側をさっきの陶器と同じような材質で覆ってある。
この上にさっきと同じように絵を描いたり色をつけたりして、今度はこっちの液体に浸けてもう1回焼くわけだ。それでこの鍋は完成」
今回は皆さんが取ってきた青い色の材料を鍋外側全面に塗ってやる。
一度乾かして仕上げ用の液体を塗って乾かして。
最後にもう一度さっきのように焼いてやる。
外側が綺麗な青、中側が白い鍋になった。
最後に蓋がつく縁の部分を少し強化してもう一度焼けば完成だ。
「こんな感じだな。これは熱を通すと何でも美味しく感じるという不思議な鍋だ。主に煮物なんかに使うけれど、茹でたり蒸したりするのに使ってもいい。熱が均等に伝わるしそこそこ保温力もあるし。コトコト煮ておいてこの鍋のまま食卓に出すなんてのが主な使い方かな。
ただ傷はつきやすいから洗う際は鉄鍋と同じように金属でゴシゴシやらないこと。まあ水につけて後で木べらを使えばだいたい焦げ付きも取れる筈だ。
あと今回は外側全部青色にしてみたが、さっきのように絵を描いてみてもいい。そんな訳で次、誰かやってみたい人はいるか?」
おずおずとグレタちゃんが手をあげる。
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