第80話 まずはマ●センをインスパイア

 現状認識能力と前世での知識を総動員して青色の素を作る。

 現在はやや灰色っぽく見える。

 でも焼けば青色になる筈だ。

「さて、これで青色の素が完成だ。今回は鍛冶場の協力で他に緑色の素と赤褐色の素、黄色の素を用意してある。本当は発色がいい赤色なんて欲しいんだがあれは作るのに結構お金がかかるので今回はパスだ」

 ちなみに緑色が銅主体、赤褐色が鉄主体、黄色が亜鉛主体に溶いたものだ。

 ちなみに発色のいい赤色は金を使う。

 この世界でも当然金は高価なのでこんな場所では使えない。


「どれも焼く前は薄い灰色に見えるけれどその辺は想像して使ってみてくれ。あと絵の具と違って色を混ぜても間の色にならないから注意してくれな」

「色の素がどんな感じに出るかの試験用は私が作ります。ですから今は自分の描きたいものを自分の勘とセンスを信じて描いてみて下さい。

 時間は1時間。それでははじめましょう」

 クラリッサ司祭補がそう言って絵付け体験開始。


 そうだ、俺も他に言う事があるんだった。

「あと鍛冶場で実習している諸君、ここで皿に絵を描く技法は実は今後別の場所でも応用することが出来る。詳しくは今日の午後やるけれどな。だから他人事だと思わないでやってみてくれ」


 午後鍛冶場でを使って実習する事はあらかじめ鍛冶場の熊に根回し済みだ。

 ちなみに鍛冶場ではホーロー鍋の作り方を説明する予定。

 この世界にも既にホーローの技術はある。

 でも主にアクセサリーや建物等の飾り等に使われていて、鍋等の実用品に使っている例はまずない。

 だから作ればそれなりに需要はあるだろう。

 目指せル・ク●ーゼまたはス●ウブ。


 でもまずはここで皿の絵付けだ。

 俺は大人げなく現状認識を最大限に使い、できあがり後を考えながら絵を描く。

 ちなみに今描いているのはマイ●ンのブルー●ニオンのパクリだ。

 いやパクりとは言い方が悪いな。

 ここはインスパイアと言っておこう。

 のまネコとかのまタコなんてもう知っている人は大分歳なんだろうな。

 どっちにしろこの世界には関係無いけれど。

 そんなしょうもないネタを頭の中で浮かべつつ筆を走らせる。


 ところでブルー●ニオンのオニ●ンって元になった絵柄はザクロなんだよな。

 でもザクロは無いのでタマネギになったらしい。

 ここにもザクロは無いのでタマネギだ。

 ところで細かい文様はあまり覚えていないな。

 葉っぱと花と蔓っぽい部分だっけ。

 ならエンドウ豆のイラストで代用しよう。

 そんな感じで全体的にマイ●ンをインスパイアして描いてみる。

 大分いい加減だけれども。

 それでもだいたい思った通りに描けているかな。


「校長先生は青以外は使わないの?」

 グレタちゃんに聞かれた。

「今回は素の白色と青色で充分かな、そう思ってさ」

「なるほど、それもいいかも」

 前世での高級食器がそんな感じだったなんてしょうもない理由は説明しない。


 さて、俺を含め一通り全員が描き上げた。

「それではこの後の処理は私がします」

 ここからはクラリッサ司祭補の作業だ。

 描いた皿を乾燥させ、更に釉薬を塗って乾燥させる。

 この辺は施術を使えるから前世より工程がかなり楽だ。

 ここでは釉薬をかけたり浸けたりせずエアブラシ方式で吹き付けている。

 クラリッサ司祭補の風の施術で気流を起こし、昔の霧吹きの原理で吹き付けているのだ。

 回転台を使ってこれをやるといい感じに薄くむらなく釉薬がつく。

 この辺はクラリッサ司祭補のオリジナルな技術だ。

 彼女なりに今度の磁器について色々製法を研究したらしい。

 ひと通り塗って乾かしたところで午前の実習終了。

 ちょうどいい時間だ。


「さて、ここから完成までは結構時間がかかる。何せ乾燥させた後半日近く焼くからさ。だからこっちは昼食を食べて、その後は鍛冶場だ。鍛冶場の方は1人1人実際にやる程用意は出来ないから作る工程を見学する感じになるけれどな」

 休日の食事は断らない限り生徒は寮に、俺は教団の食堂に用意してある。

 そんな訳で一度解散した後、午後1時にここの隣の隣、鍛冶場入口集合だ。

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